身の回りの物がインターフェースに変わる新しいタッチインターフェース技術とは

Electrick: Low-Cost Touch Sensing Using Electric Field Tomography

The SIGCHI Conference on Human Factors in Computing Systems(通称CHI)会議の2017年度Best paperの1つに選ばれた本論文は、安価なタッチインターフェースを提案しています。

現在のタッチ入力は、スマートフォン、タブレットなどの小さくて平らなアプリケーションに最適です。ただし、限られたコストで実装する必要があり、壁や家具などの大きな表面に拡大するには高価すぎます。同時に複雑な形状のオブジェクトにも、入力を提供できません。
本論文では、Electrickと呼ばれる技術の導入を提案しています。これは、小さくても大きくても、平らでも不規則でも、多種多様なオブジェクトや表面でタッチ入力を可能にする低コストで汎用性の高いセンシング技術と主張しています。つまり、言い換えると以前は静的だったオブジェクトに対して、新しいインターフェースを提供する技術となります。

実装例として論文中では、机、壁、おもちゃ、ギター、車のハンドルなど、日常人が触れるインターフェースが選ばれており、実際に動画にもなっています。Technical approachやDiscussion部分では、使用している材料の特性やパフォーマンス、ファブリケーションのプロセス、ノイズの影響とその対応手法など細かく書かれており、論文としても非常に読み応えのある一本になっているので、yユーザーインターフェースやプロトタイピングの実装法などに興味のある方は是非一読いただけると良いかと思います。

[1] Zhang, Y., Laput, G., & Harrison, C. (2017, May). Electrick: Low-cost touch sensing using electric field tomography. In Proceedings of the 2017 CHI Conference on Human Factors in Computing Systems (pp. 1-14). ACM.

URL : https://dl.acm.org/authorize.cfm?key=N36055

折り紙に影響を受けた流体圧力を用いた擬似人工筋肉

人工筋肉は、無数の機械やロボットの安全で強力な作動が可能になりますが、人工筋肉の設計、製造、および実装は、材料費、動作原理、拡張性、および自由度の収縮作動動作によって制限されることがよくあります。本論文では、流体駆動に関して、まさに折り紙風の人工筋肉のアーキテクチャを提案しています。

この概念は、圧縮可能なスケルトン、柔軟なスキン、および流体媒体のみを必要とし、これらの 3つのコンポーネントの相互作用を説明する機械モデルが開発されました。さまざまな材料を使用して複数のスケールで低コストの人工筋肉を迅速に製造するための製造方法が導入されています。

本論文で提案している人工筋肉は、実験により、これらの筋肉は初期の長さの90%以上収縮し、約600 kPaのストレスを発生させ、2 kW / kg以上のピーク電力密度を生成できることが明らかになりました。この人工筋肉のアーキテクチャは、小型医療機器からウェアラブルロボット外骨格、宇宙探査用の大規模展開可能構造に至るまで、さまざまな規模での多数のアプリケーション向けのアクチュエーションシステムの迅速な設計と低コストの製造への転用を期待している、と主張しています。

[1] Li, S., Vogt, D. M., Rus, D., & Wood, R. J. (2017). Fluid-driven origami-inspired artificial muscles. Proceedings of the National academy of Sciences114(50), 13132-13137.

論文URL:https://www.pnas.org/content/114/50/13132.full

ミミズにヒントを得て制作されたマルチマテリアルを使用したソフトロボット

Figure 1. ミミズの運動概念図および本論文で提唱しているソフトロボットの構造図 [1]
(論文[1]のFigure 1より引用)

南カリフォルニア大学らの研究チームが、ミミズにヒントを得たマルチマテリアルを用いた、マルチアクチュエータソフトロボットの設計、製作、およびフィードバック制御を開発し、その研究成果を2016年度のIEEE International Conference on Robotics and Biomimetics (ROBIO) に寄稿しています。

自然のミミズの体は、四肢が無いにも関わらず、地下の穴を掘ったり地上で動作しています。
ミミズの体は、メタメアと呼ばれる繰り返し変形可能な構造単位で構成されており、個々のメタミアは、動物の神経系によって同時に活性化される円形および縦の筋肉によって動作しています。
本研究では、メタメリックワームの基本的な機能原理を採用して、動きを模倣し、単一の穴を掘るミミズのセグメントの機能を複製する新しい空気圧駆動のソフトロボットシステムを提案しています。

このアプローチの適合性は、3つの基本的な垂直運動、水平運動、斜め運動の移動テストによって実験的に実証されています。材料自体はシリコーンで構成されているようで、今後の研究開発では、医療用カテーテルなどの応用に向け、更にスケールダウンさせたものを制作することを意図しているようです。

[1] : Calderón, A. A., Ugalde, J. C., Zagal, J. C., & Pérez-Arancibia, N. O. (2016, December). Design, fabrication and control of a multi-material-multi-actuator soft robot inspired by burrowing worms. In 2016 IEEE International Conference on Robotics and Biomimetics (ROBIO) (pp. 31-38). IEEE.

URL : https://ieeexplore.ieee.org/document/7866293

トロント大学がILSVRCコンテストで優勝した際の畳み込みニューラルネットワークに関する論文

「ImageNet classification with deep convolutional neural networks」の画像検索結果
Figure 1. 本論文で提唱しているアーキテクチャ [1]
(論文[1]のFigure 2より引用)

トロント大学の研究チームが2012年度のILSVRC(Image Net Large Scale Visual Recognition Challenge)コンテストで圧倒的に低いエラー率を達成して優勝した際の畳み込みニューラルネットワークに関する論文です。2010年度のコンテストの120万の高解像度画像を1000の異なるクラスに分類するために、大規模で深い畳み込みニューラルネットワークをトレーニングし、テストデータでは、トップ1およびトップ5のエラー率が37.5%と17.0%を達成した、と論文内で報告しています。

論文で提案しているアーキテクチャーは6,000万のパラメーターと650,000のニューロンを持つニューラルネットワークは、5つの畳み込み層で構成され、そのうちのいくつかは最大プール層、最後の1000ウェイソフトマックスを持つ3つの完全に接続された層が続きます。トレーニングを高速化するために、非飽和ニューロンと畳み込み演算の非常に効率的なGPU実装を使用しています。
完全に接続された層の過剰適合を減らすために、非常に効果的であることが証明された「ドロップアウト」と呼ばれる最近開発された正則化方法を採用したそうです。このドロップアウトという手法は、論文中に記載されているように確率0.5で各隠れニューロンの出力をゼロに設定することで構成されているそうです。

結果、ILSVRCの2012年度コンテストでこのモデルのバリアントを入力し、2位のエントリで達成された26.2%と比較して、15.3%のトップ5テストエラー率を達成したと報告しています。本手法の特徴は、特徴量抽出も機械学習で行なった点であり、近年のDeep Learningの盛り上がりのきっかけを作ったと言っても良い論文です。

[1] : Krizhevsky, A., Sutskever, I., & Hinton, G. E. (2012). Imagenet classification with deep convolutional neural networks. In Advances in neural information processing systems (pp. 1097-1105).

URL : https://dl.acm.org/doi/10.5555/2999134.2999257

1 74 75 76 77 78 79 80 86