EPFLが発表した人間の筋肉を模倣するソフトロボットを制御するための予測モデル

Soft robots that mimic human muscles [1]

L’Ecole polytechnique fédérale de Lausanne (EPFL)に所属する研究者チームが、ソフトロボットにおける様々なモジュールの機械的動作を制御するために使用できる予測モデルを発表しました。

研究背景である、筋肉のようなアクチュエータを搭載したソフトロボットは、人の動きを支援するために、人体で使用するように設計されています。このロボットのコンポーネント自体は、シリコンやゴムを含むエラストマーで作られているため、人体に対しては安全です。
設計された部品の空気圧を変えることで、ロボットのボディや意図したモジュールを制御することができます。論文では、ロボットのさまざまなモジュールの機械的動作を慎重に制御するために使用できる予測モデルを報告しています。

動画内で示されているように、これらのロボットの潜在的な用途には、患者のリハビリテーション、壊れやすい物体の取り扱い、生体模倣システム、在宅ケアが含まれるそうです。

本論文は、2016年にScientific Reportsに寄稿されています。

[1] : Agarwal, G., Besuchet, N., Audergon, B., & Paik, J. (2016). Stretchable materials for robust soft actuators towards assistive wearable devices. Scientific reports6, 34224.

URL : https://www.nature.com/articles/srep34224#f3

最初の自律型ソフトロボットがNatureから発表されました

Octobot: A Soft, Autonomous Robot [1]

3Dプリンティング、機械工学、およびマイクロフルイディクスの専門知識を持つハーバード大学の研究チームは、最初の自律型のソフトロボットを実証したと発表し、Natureに掲載されました。
この小型の3Dプリントロボットであるoctobotは、完全にソフトで自律的な新世代のマシンへの道を開く可能性があります。

ソフトロボティクスは、人間と機械の相互作用に革命をもたらす可能性があります。 しかし、研究者は完全に準拠したロボットの構築に苦労しています。 バッテリーや回路基板などの電力および制御システムは剛性が高く、これまでソフトボディのロボットは外付けのボードに接続されるなど、ハードコンポーネントが装備されていました。

本研究では、柔らかい素材のみで構成されたロボットの開発手法について報告しています。本研究で製作したOctobotと呼ばれるロボットは、流体の流れを自律的に制御するマイクロ流体ロジックで制御されており、搭載された燃料が分解され、それによって生成されたガスが、流体ネットワークを膨張させ、その結果推進する、という機構だそうです。
ロボットのボディは、成形およびソフトリソグラフィを使用して製造され、空気圧アクチュエータネットワーク、燃料、移動に必要な触媒反応領域は、マルチマテリアルの埋め込み3Dプリントを介してボディ内でパターン化されるそうです。
これらを実現したハイブリッドなアセンブリアプローチによって、水中を泳いだり、対話するソフトロボットの実現に向けて、今後は研究を行う、と報告しています。

開発されたOctobotは空気圧ベースのアクチュエータを使用していますが、今後各コンポーネントの技術的進化や3Dプリンティングの技術開発によって、更なるソフトマテリアルのロボットが開発されそうです。

[1] : Wehner, M., Truby, R. L., Fitzgerald, D. J., Mosadegh, B., Whitesides, G. M., Lewis, J. A., & Wood, R. J. (2016). An integrated design and fabrication strategy for entirely soft, autonomous robots. Nature536(7617), 451.

URL : https://www.nature.com/articles/nature19100

MIT Media Labが発表した概念「Radical Atoms」とは

Radical Atoms Exhibition at Ars Electronica (2016)

「ラディカル・アトムズ(Radical Atoms)」とは、2009年のCHIでMIT Media Labの石井裕教授が率いるTangible Media Group(タンジブル・メディアグループ)によって発表された、マテリアルとのインタラクションに関する新しいビジョンです。(動画は2016年のARS Electronicaでの動画)

このラディカル・アトムズという概念を理解するには、少しTangible Media Groupの歴史を知る必要がある。彼らは以前からTangible Bitsという概念を提唱しています。
レポート中では、Tangible Bitsとはデジタルの世界観が人間の物理的な表現行為と接触する部分があり、人間と直接対話できるという表現をしています。解釈を広げると、人間の物理的な接触および表現行為が、そのままデジタルの操作、表現行為に繋がる概念とも言い換えられる、と主張しています。

これに対して、Radical Atomsは、Bitを超えたAtom、つまりビット情報ではなく、すべての原子をコンピュテーショナルにダイナミックに変形可能な世界観と提唱しています。この概念をもう少し日常生活に当てはめると、コンピュテーショナルな部分をできるだけ隠すことで、実際の物質自体がインターフェースになる世界観です。
彼らがBeyond Tangible bitsという表現をしているのは、こういったデジタル情報ですら、動的に動かせる物質がコンピュテーショナルに演算可能で、かつインターフェースになる未来像を提唱している、と解釈できます。

非常に理解しづらい概念ではあるが、彼らの研究内容を時系列で見ていくと、その提唱する背景が理解できるかもしれません。参考になる動画も下記に貼っておきましたので、興味のある方はぜひ。

[1] Ishii, H., Lakatos, D., Bonanni, L., & Labrune, J. B. (2012). Radical atoms: beyond tangible bits, toward transformable materials. interactions19(1), 38-51.
URL : https://dl.acm.org/citation.cfm?id=2065337

[2] Radical Atoms Exhibition at Ars Electronica : https://tangible.media.mit.edu/project/radical-atoms-exhibition-at-ars-electronica/

[3] Hiroshi Ishii : Vision Driven: Beyond Tangible Bits, Towards Radical Atoms (June 2014) : https://www.youtube.com/watch?v=MNQe47xZEoE

ガラス基板上で細胞のように液体の動作を制御できる方法

Stanford researchers solve the mystery of the dancing droplets

表面上の液体の濡れ挙動を制御することは、撥水コーティングなどの産業用途にとって重要です。表面の液体の挙動は、完全に広がるような挙動から、超疎水性の液滴の動きを想像するとわかりますが、最小限のものまであります。液滴の動きを制御することは、マイクロフルイディック液体処理、表面におけるセルフクリーニング、および熱の伝達、という意味で重要と言われています。液滴の動きは、表面エネルギーの勾配で実現できますが、既存の技術では、通常は液滴の動きを制限する接触線のピン止めの影響を克服するために、大きな勾配または入念に準備された表面が必要です。

本論文では、プロピレングリコールやガラスに堆積した水など、適切に選択された混和性液体の成​​分の液滴が、隣接する液滴の動きを引き起こすことを示します。標準的な予測とは異なり、完全には広がりませんが、見かけの接触角を示します。また、液滴自体は、蒸発による表面張力勾配によって安定化され、隣接する液滴から放出される蒸気に反応して移動することを実験的および分析的に実証しています。

論文自体を読んでも非常に理解が進むとは思いますが、動画の印象が非常に強く、自律センシングや運動ベースの協調動作といったロボティクスへの応用、センシングへの応用なども著者たちは期待しているようです。

本動画が掲載された記事で、「これらの液滴は互いに感知し、移動し、相互作用します。ほとんど生細胞のようです」とManu Prakashはコメントしています。

[1] Cira, N. J., Benusiglio, A., & Prakash, M. (2015). Vapour-mediated sensing and motility in two-component droplets. Nature519(7544), 446.

記事URL:https://news.stanford.edu/news/2015/march/dancing-droplets-prakash-031115.html
論文URL : https://www.nature.com/articles/nature14272

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