柔らかい繊維から3次元オブジェクトを製造する新しいタイプの3Dプリンター

3D-printed Teddy Bears paves the path toward 3D printing clothes [1]

カーネギーメロン大学で教鞭を取り、HCI(Human Computer Interaction)の研究者でもあるスコット・ハリソン氏が開発した、柔らかい繊維(ウールとウールの混紡糸)から3次元オブジェクトを製造する新しいタイプの3Dプリンターの設計、構成、および使用例を提案した論文を紹介します。

このプリンターは、積層造形技術の実質的な利点、つまり物理オブジェクトの迅速なターンアラウンドプロトタイピング、高度なカスタマイズと構成のサポートなどを、新しいクラスの材料で使用できるようにしたそうです。
この材料は、入ってくる糸の繊維がその下の層の繊維と絡み合ったときに形成されるルーズフェルトの形で、結果として得られるオブジェクトは、ソリッドモデルで指定された幾何学的な形を再現しますが、手編みの素材を思わせるほど、柔軟だそうです。

これにより、通常の硬くて正確なフォームから、柔らかくて不正確なオブジェクトの異なる美学を具現化する新しいフォームセットに3D印刷が拡張され、研究者がインタラクティブデバイスでこのクラスの材料の使用を探索する新しい機能が提供される、と主張しています。

尚、本研究は2014年度のCHI会議(the SIGCHI Conference on Human Factors in Computing Systems)にて報告されたものです。

[1] : Hudson, S. E. (2014, April). Printing teddy bears: a technique for 3D printing of soft interactive objects. In Proceedings of the SIGCHI Conference on Human Factors in Computing Systems (pp. 459-468). ACM.

URL : https://dl.acm.org/citation.cfm?id=2557338

目的に合致した変形挙動を持つ材料の設計と製作フロー

Design and Fabrication of Materials with Desired Deformation Behavior (SIGGRAPH 2010) [1]

本論文は、2010年度に開催されたACM Special Interest Group on Computer GRAPHics(通称SIGGRAPH)に寄稿されたものです。

この論文では、目的の変形挙動を持つ材料を、設計および製造するためのデータ駆動型プロセスを紹介しています。
このプロセスは、動画上では、非常にわかりやすく説明していますし、下記図を参照すると、非常に理解が進みます。

Designing deformable materials ([1]より引用)

ベースとなる材料の変形特性の測定から始まり、各基本材料について、一連の変形データを取得後、材料を有限要素モデルの非線形応力-ひずみ関係として表します。ベース材料の任意のスタックのシミュレーションと、製造された材料スタックの測定された変形を比較することにより、材料測定プロセスを検証しています。材料の測定後、ユーザーの基準を満たす最適なスタックレイヤーの組み合わせを見つけ、ベース材料の積み重ねられた層の設計をするそうです。

私たちのアルゴリズムは、組み合わせからよくない解決策を取り除くために多くの戦略を採用しているそうです。最新のマルチマテリアル3Dプリンタを使用して、複雑な異種材料を含むオブジェクトを設計および製造することにより、完全なプロセスを実証する、と主張しています。

[1] : Bickel, B., Bächer, M., Otaduy, M. A., Lee, H. R., Pfister, H., Gross, M., & Matusik, W. (2010). Design and fabrication of materials with desired deformation behavior. ACM Transactions on Graphics (TOG)29(4), 63.

URL : https://dl.acm.org/citation.cfm?id=1778800

Eスキンに関するREVIEW論文

本記事では、2013年度にAdvanced Materialsに寄稿された、ヒューマンインターフェースデバイスのREVIEW論文の内容を紹介したものです。

Figure 1. 電子スキン (Eスキン) の技術発展の年表 [1]

過去10年間で、新しい素材やプロセスが利用できるようになったため、eスキンの開発のペースは劇的に加速しています。
論文中に掲載されていますが、図1のように、2000年までのインターフェースの研究とSF作品が混ざって現在のeスキンの開発系譜になったそうです。

このeスキンの汎用性は非常に高く、順応性のあるディスプレイデバイスになり得る可能性も秘めてますし、医療分野では特に生体模倣した人工装具、健康モニタリング技術、診断および治療能力を提供することにより、革命をもたらす可能性すら秘めています。
特に、センサー機能と回路機能だけとれば、多くの点ですでに生体皮膚の特性を超えており、皮膚よりも何倍も伸びる電子デバイスが製造されていたり、優れた空間分解能を有する触覚センサーなど、特性面では非常に優れています。

ただ、肌に直接貼れる薄型のデバイス、つまり高機能で低コストのデバイスを作成するには、優れた電気的性能と大面積処理技術との互換性が重要であり、この部分はまだ技術開発の余地があります。
有機材料含め、今後はさらに微細化を辿っていくため、eスキンに関する参考文献を示してくれている本論文は非常に有用なものになると思います。
eスキン開発者や、インターフェース研究者などは知っておいて損はないかと思います。

[1] : Hammock, M. L., Chortos, A., Tee, B. C. K., Tok, J. B. H., & Bao, Z. (2013). 25th anniversary article: the evolution of electronic skin (e‐skin): a brief history, design considerations, and recent progress. Advanced materials25(42), 5997-6038.

URL : https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/adma.201302240

Disneyがディスプレイ上で触覚を感じるアルゴリズムを提案

Tactile Rendering of 3D Features on Touch Surfaces

本論文はDisney ResearchよりPublishされ、UIST 2013でも報告があった論文です。

このプロジェクトでは、触覚レンダリングアルゴリズムを開発および適用して、タッチスクリーンサーフェス上の豊富な3D幾何学的特徴(バンプ、リッジ、エッジ、突起、テクスチャなど)をシミュレートします。
この技術の前提となっているのは、指が物体の上を滑ると、皮膚の摩擦に敏感な感覚器によって微小な表面の変化が感知されるというものです。したがって、指先とタッチ面の間の摩擦力を調整すると、表面の変化の錯覚が生じます。仮想バンプの局所的な勾配が横方向の摩擦力にマッピングされると、3D「バンプ」の知覚が作成され、ディスプレイに何気なく写っている2次元の物体に凹凸を感じる新しいハプティックの技術を提案しています。

動画でも非常にわかりやすいのですが、どの程度の定量感を持って物体の表面状態を知覚できるかは不明です。論文や動画では、写真や3Dモデルを含むさまざまな視覚コンテンツ上で、触覚を作成できることを実証していますが、実際に実装して、どの程度の感覚になるかは確かめてみたいところです。
同時にロケーション事業を展開しているDisneyならではの着眼点で、体験の幅を広げられる触覚の重要な役割に着目していると言えます。そういった意味でもこの技術の応用範囲は広そうです。

Kim, S. C., Israr, A., & Poupyrev, I. (2013, October). Tactile rendering of 3D features on touch surfaces. In Proceedings of the 26th annual ACM symposium on User interface software and technology (pp. 531-538). ACM.

URL : https://dl.acm.org/citation.cfm?id=2502020

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