Whitesides氏が語る研究論文の意味とアウトラインの重要性

研究論文は研究者にとって重要な成果物

“Interesting and unpublished” is equivalent to “non-existent”.
という強烈なAbstractから始まる本論文は、Whitesides氏が2004年にAdvanced Materials誌に寄稿した、論文の書き方という論文です。

元々はWhitesides氏の研究室で採用されていた論文の書き方だそうですが、広く一般的に普及すべき内容であり、同時に論文の単なる書き方だけではなく、プロジェクトに関する考え方まで普遍的に解釈できる内容となっています。

印象に残るフレーズは多く、
・アウトライン:論文の構成を書いた設計図
・まずは白い紙を用意する。そして論文に関する思いつく重要事項を全て書き出してみる
完成した論文における研究と仕事の理由付けの研究では、目的は異なる
など、研究の全体像を設計する際には非常に参考になる考え方が含まれています。

非常に短い論文であるため、目を通していただくと、自分の業務や研究に活かせる部分が多いかもしれません。

[1] : Whitesides, G. M. (2004). Whitesides’ group: writing a paper. Advanced Materials16(15), 1375-1377.

論文URL:https://onlinelibrary.wiley.com/doi/abs/10.1002/adma.200400767
参考記事(日本語全訳つき):https://www.chem-station.com/blog/2009/12/whitesides_group_writing_a_pa.html

チタンアルミカーバイドが作る2次元のナノ結晶

Figure 1. Analysis of Ti3AlC2 before and after exfoliation [1]

通常、2次元(2D)の自立型結晶は、3Dの対応する結晶とは異なる特性を示します。
本論文では、フッ化水素酸中のTi3AlC2の室温剥離によって生成される、いくつかのTi3C2層と円錐スクロールから構成される2Dナノシートについて報告しています。 ソフトウェアを用いた計算化学シミュレーションにより予測される大きな弾性係数、および表面化学により、これらのナノシートはポリマー複合フィラーとして魅力的となると主張しており、同時に表面終端を変えることでバンドギャップを調整できると予測しています。

処理された粉末の良好な導電性と延性は、リチウムイオン電池、コンデンサ、およびその他の電子用途での使用を示唆しています。似たような物質として、グラフェンは他のすべての2D材料を組み合わせたものよりも注目を集めていますが、その単純な化学的性質と多層構造の層間の弱いファンデルワールス結合により、その使用が制限されています。

[1] Naguib, M., Kurtoglu, M., Presser, V., Lu, J., Niu, J., Heon, M., … & Barsoum, M. W. (2011). Two‐dimensional nanocrystals produced by exfoliation of Ti3AlC2. Advanced Materials23(37), 4248-4253.

論文URL:https://onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.1002/adma.201102306

グラフェン、酸化グラフェンの特性、合成方法のまとめ

物理学、化学、材料科学などの分野で、グラフェンに強い関心が寄せられています。グラフェンは炭素原子のシート状物質で構造自体は蜘蛛の巣によく例えられますが、その物性は非常に優れています。表面積、移動度、ヤング率、熱伝導率、光透過率、導電率といった材料物性特性は非常に優れた値を持ち、他の多くの潜在的な用途の中でも、透明導電電極などの用途に注目する価値があります。グラフェンの非常に優れた性質と、応用の可能性に対する関心は、数千の出版物と加速する研究を生み出し、そのような研究のレビューをタイムリーに行っています。

本論文では、グラフェンの合成、物理的特性、および潜在的な用途(特に酸化グラフェン)について説明しており、単層から数層までの多層グラフェンについても触れていますし、特に多層グラフェンについては、層数の制御についての可能性についても言及しています。

[1] Zhu, Y., Murali, S., Cai, W., Li, X., Suk, J. W., Potts, J. R., & Ruoff, R. S. (2010). Graphene and graphene oxide: synthesis, properties, and applications. Advanced materials22(35), 3906-3924.

論文URL:https://onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.1002/adma.201001068

CG界の著名な巨匠達を生み出したユタ大学の伝説の研究室

コンピュータグラフィックのメッカをご存知でしょうか?
アメリカ合衆国の西部に位置するユタ州、ソルトレイクシティにあるユタ大学で、とある著名な研究者が、現在のコンピュータグラフィックス、Virtual Reality(VR)およびGUIと呼ばれるグラフィックユーザーインターフェースの技術に関する、多くの基礎技術を作った伝説のラボを生み出します。

Ivan Sutherland Sketchpad Demo

そのユタ大学の伝説のラボを作ったとされ、教授を務めていたのが、アイヴァン・サザランドです。サザランド氏は、世界ではじめてのGUIを作成したと言われています。元となったMITラボに所属する際の博士論文テーマである「Sketch Pad : 人間と機械のグラフィックコミュニケーションシステム」[1] は、GUI(グラフィカルユーザーインターフェース)の開発に多大な影響を与え、後のコンピュータグラフィックに最も影響を与えたと言われています。(動画はサザランド氏がテレビのインタビューに答えてデモをしたものだそうです)
そのサザランド氏が設立したユタ大学の研究室から、たった数年間の間に、コンピュータサイエンス、特にコンピュータグラフィックスの基礎となる技術がほとんど生まれたとされており、同時にその研究室から様々な著名な研究者が生まれています。

以下に、サザランドがユタ大学で教授を務めた際の著名な教え子と、後に同僚のデビット・エヴァンスと共に設立したエヴァンス・サザランド社で勤務していた著名な人を記載します。

また非常に面白い事に、サザランドがMITで博士課程だった際の教員は、アラン・チューリングやジョン・フォン・ノイマンと共にコンピュータの基礎を作ったとされるクロード・エルウッド・シャノンであり、コンピュータサイエンスの技術開発の歴史がつながっていることがわかります。

研究者の功績と研究室は非常に密接な関係性があり、その周囲環境によっても研究者のパフォーマンスは大きく変わります。現在の研究の歴史を少し紐解くと、その連続性と人々の繋がりに非常に興味深いものを覚えます。
今後研究者を目指される方は、自分の興味がある研究テーマの現在のトレンドや、過去の歴史を紐解いてみるのが良いのではないでしょうか。

[1] : https://www.cl.cam.ac.uk/techreports/UCAM-CL-TR-574.pdf

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