画像処理におけるエッジコンピューティングを加速するORRAMデバイス

本記事は2019年7月にNature Nanotechnologyに寄稿された論文に関する内容です。

ニューロモーフィック、という言葉を耳にしたことがある方は多いかもしれませんが、ニューモーフィックとは動物の脳の働きを模したもの、つまり脳の神経細胞の構造を模したものであり、現在コンピューティング領域においては様々な研究が進められています。

今回の論文で扱っているのはニューロモーフィックビジョンシステム、つまり画像の取得からコンピューティングなどのセンシング領域のもので、このシステムは、可視光領域を超えて、人間の視覚システムの基本機能を擬似的に再現する可能性を秘めています。
ただし、従来のイメージセンサー、メモリ、処理プロセッサに基づく視覚システムの複雑な回路は、デバイスの統合と消費電力の点で重大な課題があり、本論文では、不揮発性の光学抵抗スイッチングと光調整可能なシナプス挙動を示す効率的なニューロモーフィックビジョンシステム用のシンプルな2端子光抵抗ランダムアクセスメモリ(ORRAM)シナプスデバイスを提案しています。

Figure 1. ORRAM (光抵抗RAM) を使用した場合の画像処理シュミレーションに関する図 [1]

このデバイスを使用するメリットは、ORRAMアレイを使用すると、図1のように、画像処理とメモリ機能、およびニューロモーフィックな視覚的な前処理が可能になり、後続の処理で効率と画像認識率が向上し、消費電力を削減できる可能性を示唆しています。

本研究で提唱しているシステムは、ニューロモーフィックビジュアルシステムの回路を簡素化し、エッジコンピューティングの向上が見込まれることになり、今後のユビキタスコンピューティングへの分野の発展も期待できそうです。ORRAMアレイデバイスの制作方法や、Simulationのソースコードなども使用可能だと記載があるので、興味がある方はぜひ、読んでみてください。

[1] : Zhou, F., Zhou, Z., Chen, J., Choy, T. H., Wang, J., Zhang, N., … & Chai, Y. (2019). Optoelectronic resistive random access memory for neuromorphic vision sensors. Nature nanotechnology14(8), 776-782.

URL : https://www.nature.com/articles/s41565-019-0501-3