近赤外イメージャーチップ用の石英基板上の裏面照射GeSnフォトダイオードアレイ

GeSnベースのNIRイメージャーチップの概念図とプロセス構造図 [1]

GeSn合金は、NIRと呼ばれる近赤外線(Near InfraRed)の波長範囲(1.5〜5μm)でのイメージング/センシング用の有望なIV族材料として大きな注目を集めています。SnをGeに取り込むと、バンドギャップが縮小し、カットオフ波長が2μmを超えて広がります。さらに、GeSn合金は、その高い電子およびホール移動度のために、CMOSチャネル材料としても期待されています。

GeSnベースのCMOS回路とフォトダイオードのモノリシック集積により、高性能NIRイメージャーチップを実現する道が開かれると著者らは報告しており、これまでのSi基板上のGeSnベースのフォトダイオードは、分子線エピタキシー(MBE)や化学気相成長(CVD)などのエピタキシャル成長技術を使用して実証されてきました。ただし、GeSnとSiの間の4%を超える大きな格子不整合により、高品質のGeSn層を得ることが難しくなります。これは、フォトダイオードの暗電流を抑制するための重大な障害です。

大阪大学と広島大学の研究チームが、NIRのイメージャーチップのため、1.3 A / Wの高応答性を備えた裏面照射型ゲルマニウムスズ(GeSn)フォトダイオードアレイを製作したと報告し、その研究成果を2017年度のIEEE International Electron Devices Meeting (IEDM) にて報告しています。
レーザー誘起液相結晶化技術を使用して、引張歪み単結晶GeSn合金に基づく大面積で高整合性のフォトダイオードアレイが石英基板上に形成したそうです。
製造されたGeSn n + / pダイオードでは、120 Kで10 -3 A / cm2の低暗電流で5桁の記録的なオン/オフ比が得られました。 裏面照射のおかげで、1.55および2μmの波長でも大幅に強化されたNIR光応答を達成したと

[1] : Oka, H., Inoue, K., Nguyen, T. T., Kuroki, S., Hosoi, T., Shimura, T., & Watanabe, H. (2017, December). Back-side illuminated GeSn photodiode array on quartz substrate fabricated by laser-induced liquid-phase crystallization for monolithically-integrated NIR imager chip. In 2017 IEEE International Electron Devices Meeting (IEDM) (pp. 16-3). IEEE.

URL : https://ieeexplore.ieee.org/document/8268402

意図した伸び縮みができる?複合シリコーンの設計方法とは

MetaSilicone: Design and Fabrication of Composite Silicone with Desired Mechanical Properties

この記事では、Disney Researchが2017年に発表した、自由な機械特性を設計できる複合シリコーンゴムを設計および製造する方法の論文について紹介します。

本論文で扱っているアプローチの基本原理は、液体ドーパント材料をシリコーンマトリックス材料に注入する、という極めてシンプルな方法で、内包物の数、サイズ、位置、およびそれらの材料を変えることにより、物理的な制御、つまり伸び縮みなどの機械的特性を自由に設計できる、と著者らは主張しています。
本論文で扱われている手法の技術的なアプローチは、拡張有限要素法であるXFEM(eXtended Finite Element Method)と感度解析に基づくシミュレーションモデルを組み合わせて、マクロレベルで望ましい剛性特性をもたらす分布を計算する最適化アルゴリズムによって形成されているそうです。

3Dプリンタの一般普及からも伺えるように、デジタルファブリケーション技術の進歩により、メタマテリアルに関する豊富な特性を備えた、かつ複雑な構造を持つような複合材料に関する研究の新しい波が生まれています。
手頃な価格の3Dプリンタのパワーが向上することにより、メタマテリアルを製造する能力が消費者レベルに到達しています。新しいファブリケーションの方法が研究開発によって盛んに出てくることは、DIY好きな消費者にとっては朗報と言えると思います。

[1] Zehnder, J., Knoop, E., Bächer, M., & Thomaszewski, B. (2017). Metasilicone: design and fabrication of composite silicone with desired mechanical properties. ACM Transactions on Graphics (TOG)36(6), 240.

URL : https://dl.acm.org/citation.cfm?id=3130881

VRを用いた人間アクチュエータの正体とは

Mutual Human Actuation (UIST 2017)

本研究は2017年度のACM Symposium on User Interface Software and Technology会議、通称UISTに寄稿されたものです。

論文の背景となるVR(Virtual Reality)は仮想現実と呼ばれ、ユーザの五感を含む感覚を刺激することにより、仮想的に作り出した世界を用いて人間を錯覚させる技術の一つです。
このVRの世界を利用したHuman Actuationは、人々を使用してユーザーに大規模な力のフィードバックを提供するという考え方です。ただ、この考え方だと、ユーザーとして参加した場合、これらの人々が持つことができた経験よりも没入感が少ないそうです。

本論文では、仮想空間上では人間には見えていないが、そのフィードバックをする力、つまりアクチュエータを人間で置き換え、相互に人間の力を使って体験を拡張する、という新しい手法を紹介しています。
この時の重要な考え方は、ユーザーのペアを同時に体験させ、それらが互いに人間の作動を提供するようにすることです。本論文で提案しているシステム、Mutual Turkは、反対側に人間がいるという事実を曖昧にしながらユーザーが力を交換できる共有小道具を提供し、2人のユーザーのタイムラインを同期して、共有小道具の操作は、両方の仮想世界で一貫しています。
動画の中で、釣りをする人と釣竿になったり、移動中の乗り物に乗るユーザーをもう一人のユーザーが操縦する、といった例を使用して示しています。

このシステムで重要なのは時刻同期性とレイテンシーです。少しでもずれてしまうと違和感が生じてしまうことは明らかですが、動画を見る限り、違和感がない体験を演出できている、興味深いシステムです。

[1] : Cheng, L. P., Marwecki, S., & Baudisch, P. (2017, October). Mutual human actuation. In Proceedings of the 30th Annual ACM Symposium on User Interface Software and Technology (pp. 797-805). ACM.

URL : https://dl.acm.org/citation.cfm?id=3126594.3126667

ハーバード大学が開発したテキスタイルシリコーンセンサとその製造方法

Textile Silicone Hybrid Sensor – Batch Manufacturing Method [1]

ハーバード大学のWyss研究所の研究チームが、人間の関節の検出やソフトロボティクス、および外骨格に使用される、伸縮性の高いテキスタイルシリコン静電容量センサーの設計とバッチ製造を開発し、その研究成果をAdvanced Materials Technologiesに寄稿しています。

本論文で提案しているセンサーは、電極としての導電性ニット生地と誘電体としてのシリコーンエラストマーで作られています。
バッチ製造技術により、大きなセンサーマットの製造とセンサーの任意の成形が可能になり、センサーマットのレーザー切断によって正確に実現され、個々の静電容量センサーは、高い直線性、低いヒステリシス、および1.23の歪みゲージ率を示すそうです。

マイクロ同軸ケーブルのフィラメントをセンサーの導電性布地電極と熱可塑性フィルムで融着することにより、柔軟で薄型に電気接続が確立されるそうです。
静電容量センサーは、指の動きを検出するための手袋に組み込まれ、その検出感度を論文中で報告しています。

動画はFabrication方法も掲載してくれているので、非常にトレースしやすい内容となっています。

[1] : Atalay, A., Sanchez, V., Atalay, O., Vogt, D. M., Haufe, F., Wood, R. J., & Walsh, C. J. (2017). Batch fabrication of customizable silicone‐textile composite capacitive strain sensors for human motion tracking. Advanced Materials Technologies2(9), 1700136.

URL : https://onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.1002/admt.201700136

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