Hydrogelエラストマー上に伸縮性電極を転写する技術

Ultrastretchable Conductor on Skin-Like Hydrogel–Elastomer Hybrid Substrates for Skin Electronics

本論文は2018年にAdvanced Materialに寄稿されたものです。

研究背景である印刷技術は、伸縮性電極の製造に使用できるため、インクジェットプリンターでの電極印刷などに代表されますが、世界中で多くの研究が進んでいます。適用するアプリケーションとして、ウェアラブルデバイスがある前提で考えると、比較的高度な伸縮性と導電性を必要とする重要な部分を担っています。

本論文では、印刷可能なAgインクを水溶性テープを使用してEcoflexエラストマーとヒドロゲル層を含む伸縮性の材料に転写することにより、印刷可能で伸縮性の高い導体を製造する手法を提案しています。
製造されたハイブリッドフィルムの弾性率は、ハイドロゲル上にコーティングされたEcoflexエラストマーフィルムの厚さが非常に薄い(30 µm)ため、弾性率はハイドロゲル層に近い特性を示すそうです。

さらに、ハイブリッドフィルム上に製造された導体の歪み特性は非常に高いものを示すそうです。
歪み特性自体の数値は、論文中に記載されていますし、本構造の断面構造も掲載されているので、興味があればぜひご確認ください。

[1] : Kim, S. H., Jung, S., Yoon, I. S., Lee, C., Oh, Y., & Hong, J. M. (2018). Ultrastretchable Conductor Fabricated on Skin‐Like Hydrogel–Elastomer Hybrid Substrates for Skin Electronics. Advanced materials30(26), 1800109.

URL : https://onlinelibrary.wiley.com/doi/abs/10.1002/adma.201800109

複数のマテリアルを埋め込んだソフトマテリアルアクチュエータの開発

3D Printing: Soft Robots with Embedded Sensors

本論文は、Wyss InstituteとHarvard SEAS(John A.Paulson School of Engineering and Applied Science)の研究者たちが開発した、ソフトマテリアルで製作したロボティクスに関する論文です。

研究背景であるソフトロボティクスの分野で研究しているロボティクスは、柔軟で有機的な構造と、生物の動きを模倣しようとしています。というのも、元々人間は、手先の器用さ、運動能力、および体性感覚システムによって提供されるフィードバックに依存する他の身体能力を持っており、従来の剛性材料を使用したロボットには表現できない繊細さを表現することが求められているためです。

本論文では、マルチマテリアルの埋め込み3D印刷を介して、ソフトソマトセンシティブアクチュエータ(SSA)と呼ばれるセンサーの複雑なネットワークから構成されるソフトロボットアクチュエータを作成する方法を報告しています。
この新しい製造アプローチにより、エラストマーマトリックス内に複数のイオン伝導性および流体性の特徴をシームレスに統合して、所望の生態系を模倣したセンシングおよび動作機能を備えたアクチュエータを製造できる、と主張しています。

また、複数のアクチュエータを組み合わせることで、ソフトロボットグリッパーに組み込まれ、埋め込まれた湾曲、膨張、および接触センサー(深部および精密接触センサーを含む)を介して触覚フィードバックを提供しています。この様子は動画内でも紹介されています。

こういったソフトマルチマテリアルの需要は非常に高いと想像され、今回の製造プラットフォームにより、複雑なセンシングモチーフをソフトアクチュエーティングシステムに簡単に統合できる、と論文では主張しており、ソフトロボット、機械、および触覚デバイスのフィードバック制御に向けた必要なステップでもある、と報告しています。

[1] : Truby, R. L., Wehner, M., Grosskopf, A. K., Vogt, D. M., Uzel, S. G., Wood, R. J., & Lewis, J. A. (2018). Soft somatosensitive actuators via embedded 3D printing. Advanced Materials30(15), 1706383.

URL : https://onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.1002/adma.201706383

技術の表現が見せるアート性。世界有数の建築家:レンゾ・ピアノ

The genius behind some of the world’s most famous buildings [1]

本物の美は目に見えないものが目で見えるものと交わり、表面に現れること。これはアートや自然界だけで起きる現象ではありません。
Real beauty is when the invisible joins the visible, coming on surface. And this doesn’t apply only to art or nature.

出典 : https://www.ted.com/talks/renzo_piano_the_genius_behind_some_of_the_world_s_most_famous_buildings/

こう語るのは、世界有数の著名な建築物を手がけたイタリアの著名な建築家である、レンゾ・ピアノ氏です。ロンドンのシャード、パリのポンピドゥーセンター、ニューヨークのホイットニー美術館、日本の関西国際空港などの建築物は、伝説の建築家レンゾ・ピアノによって設計されたものです。

レンゾ氏の手法はハイテク建築として知られていますが、実際には彼の功績は、機械的な技術を導入した建築物という意味ではなく、その技術の表現を通して美的な感動を人々に与える部分だと言われています。

この動画の中で、レンゾ氏が建築について語る部分がありますが、建築が住居を作るというためだけのものではなく、コミュニティを醸成している、という考え方や、美に関する考え方など、建築以外の分野に対しても非常に参考になる思想であり、自分たちの仕事や研究が、どういうものを生み出して、社会にどう貢献しているかなどを考えさせてくれるきっかけになるかもしれません。

[1] : https://www.ted.com/talks/renzo_piano_the_genius_behind_some_of_the_world_s_most_famous_buildings

[2] : https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AC%E3%83%B3%E3%82%BE%E3%83%BB%E3%83%94%E3%82%A2%E3%83%8E

MITが開発したフォトクロミックインクを使用した物体の外観の色を変える方法:ColorMod

ColorMod: Recoloring 3D Printed Objects using Photochromic Inks

MITの教授Stefanie Muellerのチームが、ColorModというフォトクロミックインクを使用した物体の外観の色を変える手法を開発したことを発表しました。

フォトクロミック材料とは、特定の波長の光にさらされると、外観を透明から着色に切り替えることができます。その材料が光源の特定波長に反応して着色する、という単純な原理に基づいています。
オブジェクトが光源から削除されても、色はアクティブのままです。このプロセスは完全に可逆であるため、ユーザーは色を自由に変更できます。
本研究の新規性の部分は、マルチカラーの変更(赤から黄色など)に拡張する方法を提案しているところです。

本研究の大きな貢献は、製造後でも外観のマルチカラー変更を可能にすること、同時にアクティブの期間が非常に長いことだと考えます。本論文中にも記載がありますが、室内の一般的な光源化であれば90日程度は持つそうです。
ただ、太陽光のように強い波長の光を浴びると脱色が早くなりそうなので、外に持ち出すとどうなるか、など知りたいことは多いですが、こういったカスタム印刷可能なインクの材料や印刷プロセスの研究が進めば、いずれは、外出中にユーザーがオブジェクトの色を変更できるようになるかもしれません。

[1] : Punpongsanon, P., Wen, X., Kim, D. S., & Mueller, S. (2018, April). ColorMod: Recoloring 3D Printed Objects using Photochromic Inks. In Proceedings of the 2018 CHI Conference on Human Factors in Computing Systems (p. 213). ACM.

URL : https://dl.acm.org/citation.cfm?id=3173787

1 68 69 70 71 72 73 74 86