バッテリーレスでIDを識別するRFIDタグに関する技術

[UIST ’18] RFIMatch: Distributed Batteryless Near-Field Identification

本論文はHCIの国際会議であるACM Symposium on User Interface Software and Technology(通称:UIST)の2018年度に報告された内容です。

論文で紹介されているのは、2つのRFID(ID情報を埋め込んだタグから、電磁界や電波などを用いた近距離の無線通信によって情報をやりとりするもの)タグ間で、尚且つバッテリーなしで分散型の近接ID識別を有効にする手法です。このモジュールは、IDの識別だけでなく、磁気反発力による触覚フィードバックも提供するため、ユーザーは物理的な制約を受けることなく、システムの状態を知覚できる、と著者らは主張しています。

バッテリーレスの環境発電モジュールと発光ダイオードを介して、視覚的なフィードバックを追加できるという新しいこのモジュールは、現在言われているようなIoTの世界観を加速させる技術になるかもしれません。今後、持ち運び可能にするために十分にハードウェアを小さくするなど、さらなる改善を行うことで消費者に浸透するかもしれません。

[1] : Liang, R. H., Hsieh, M. J., Ke, J. Y., Guo, J. L., & Chen, B. Y. (2018, October). RFIMatch: Distributed Batteryless Near-Field Identification Using RFID-Tagged Magnet-Biased Reed Switches. In The 31st Annual ACM Symposium on User Interface Software and Technology (pp. 473-483). ACM.

URL : https://dl.acm.org/citation.cfm?id=3242620

素肌のような感覚で指先に貼る事ができる薄い触覚インターフェース

Tacttoo: A Thin and Feel-Through Tattoo for On-Skin Tactile Output

本論文は、2018年に開催されたヒューマンコンピュータインターフェースに関する国際会議であるACM Symposium on User Interface Software and Technology(通称UIST)で報告された内容です。

ドイツのザールランド大学の研究チームが、ユーザーの肌に電気触覚を出力するためのインターフェースを開発し、その効果を検証しています。今回紹介しているインターフェースは、非常に薄く、厚さが35µm未満であり、指先を含む複雑な身体形状に適用できるため、さまざまな身体の場所に拡張できる、と著者らは主張しています。
実際、電極の構成は論文中に書いてありますが、非常にシンプルであり、拡張性が高そうです。厚著者らも考えているように、ウェアラブルコンピューティング向けの触覚インターフェイスとしては有用かもしれません。高密度の触覚出力を提供しながら、素肌に似た自然な触覚を保持していることも、ユーザーフレンドリーな部分かもしれません。

触覚拡張現実および皮膚上の相互作用を利用したアプリケーションは非常に汎用性が高いため、特に耐久性部分の向上が普及する一つの要因ではないでしょうか。

[1] : Withana, A., Groeger, D., & Steimle, J. (2018, October). Tacttoo: A thin and feel-through tattoo for on-skin tactile output. In The 31st Annual ACM Symposium on User Interface Software and Technology (pp. 365-378). ACM.

URL : https://dl.acm.org/citation.cfm?id=3242645

Googleが編み紐を入出力インタフェースにしたインタラクション技術を発表

I/O Braid: Scalable Touch-Sensitive Lighted Cords Using Spiraling, Repeating Sensing Textiles and Fiber Optics

ACM UIST2018でGoogleのInteraction Labのチームからタッチ入力と発光により出力を行う編み紐型のインタフェース技術が発表されました。

これまでにも導電性の糸を編み込んだテキスタイルをProject Jacquardとして発表していましたがWearableの入出力として素材そのものをインタフェースとして活用する研究を続けているようです。

Fig. 入出力判定の様子
([1] Figgure1より引用)

今回発表されたI/O Braidでは上の写真のように人が触れている状態に合わせて編み紐自体が光によりその状態を帰る入出力(IO)を兼ねています。

I/O Braidは系24本の糸(内4本×2セットの導電性の糸と8本×2セットの通常の糸)をよることで4×4のSensingを可能にしています。また8本の糸の内、4本をFiber Optic Lineにすることでディスプレイ機能を実装しています。

各センシングラインの静電容量の変化を捉えることで様々なの指操作のインタラクション状況を推定しています。

論文ではApplicationとしてスマートフォンに繋がれたイヤホンコードやパーカーの紐の部分に組み込み、メディアプレイヤーとして活用するといったユースケースシナリオを紹介しています。

興味深いことに論文中では、I/O BraidによりVolumeを操作するといったテストを43名程に対して行いアンケートによる定性評価を行なっており、概ねポジティブな反応が得られています。(少数はネガティブな反応の方もいらっしゃいます。)最近は無線型のイヤフォンが流行っていますが、このように衣服自体をインタフェースにするのも一つのトレンドとしてあらわれてくるかもしれないですね。

[1]Olwal, A., Moeller, J., Priest-Dorman, G., Starner, T., & Carroll, B. (2018, October). I/O Braid: Scalable Touch-Sensitive Lighted Cords Using Spiraling, Repeating Sensing Textiles and Fiber Optics. In The 31st Annual ACM Symposium on User Interface Software and Technology (pp. 485-497). ACM.

URL: https://dl.acm.org/citation.cfm?id=3242638

フレームレス流体誘電エラストマーアクチュエータによって駆動される半透明ソフトロボット

Translucent Soft Robots Driven by Frameless Fluid Electrode Dielectric Elastomer Actuators

潜水ロボットは、捜索救助、環境監視、および防衛アプリケーションでますます使用が増えています。誘電エラストマーアクチュエータ(DEA)で作られた人工筋肉は、その高いエネルギー密度、軽量、効率に基づいて、水中ロボットを駆動するための魅力的な選択肢の1つになることが期待されています。
ただし、DEAの課題の1つとして、デバイスのパターン化、不透明化、および/または剛性の追加が困難な材料で作られた導電性電極が必要なことだそうです。多くのDEAは事前にストレッチされたエラストマー膜に基づいており、事前ひずみを維持するために剛性または半剛性のフレームが必要であることも課題として挙げられています。

UCサンディエゴらの研究チームは、水電極の1つとして液体で満たされた内部チャンバーと、2番目の電極として周囲の環境液体を使用する、フレームレスの水中DEA設計の使用を研究し、その成果をScience Roboticsに寄稿しています。提案している方法により、代替のアプローチと比較して人工筋肉の設計が簡単になり、水中ロボット用の軽量かつ柔らかく透明なアクチュエータを作成できるそうです。

論文中にも記載があるように、幼うなぎにインスパイアされたプロトタイプの水泳ロボットで、このアプローチの実現可能性を実証しました。同時に、ロボットの本体を介したカモフラージュとディスプレイの機能を実証しました。これは、可視スペクトル全体で平均94%の透過率を持っており、静かで半透明の水泳ソフトロボットの人工筋肉として機能するDEAの可能性を示唆しています。

誘電エラストマーアクチュエータ(DEA)は、ロボット工学、人工筋肉、マイクロフルイディクスなど、さまざまな新しい用途に有望な実現技術です。これは、他のアクチュエータと比較した場合、大きな作動ひずみ、高速応答率、低コストと低ノイズ、高エネルギー密度、高効率によるものだそうです。

[1] : Christianson, C., Goldberg, N. N., Deheyn, D. D., Cai, S., & Tolley, M. T. (2018). Translucent soft robots driven by frameless fluid electrode dielectric elastomer actuators. Science Robotics3(17), eaat1893.

URL : https://robotics.sciencemag.org/content/3/17/eaat1893/tab-pdf

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