ソニーが開発したホログラフィック光学素子をプラスチック基板にラミネートする製造プロセス

Figure 1. Holographic光学素子をプラスチック基板にラミネートした図 [1]
(論文[1]のFigure 8より引用)

軽量でスタイリッシュなデザインの拡張現実(AR)メガネには、一般消費者に新しいウェアラブルデバイスを広く普及させるための自然なシースルー機能が求められています。

ソニーの研究チームは、ホログラフィック光学素子(HOE)を光学グレードの品質でプラスチック基板にラミネートできるホログラフィック導波路コンバイナーのユニークな製造プロセスの開発に成功した、と報告しています。

プラスチック基板導波管結合器は、従来のガラス基板結合器よりも多くの利点があり、またプラスチック基板で実現することにより、ARメガネは破損しません。
ホログラフィック光学素子のラミネーションプロセスにより、それらをさまざまなデザインに適用して、スタイルに対する一般顧客の幅広い好みを満足させることができる利点もあると主張しています。
また、新しいロールツーロールホログラム記録およびラミネートプロセスを使用することにより、ホログラフィック導波路コンバイナーをより低コストで大量に生産できるようになりました。この論文では、ARグラスのプラスチック基板HOE製造プロセスのアプローチを紹介しています。

[1] : Yoshida, T., Tokuyama, K., Takai, Y., Tsukuda, D., Kaneko, T., Suzuki, N., … & Machida, A. (2018). A plastic holographic waveguide combiner for light‐weight and highly‐transparent augmented reality glasses. Journal of the Society for Information Display26(5), 280-286.

URL : https://onlinelibrary.wiley.com/doi/abs/10.1002/jsid.659

人間の動いた軌跡を視覚化するシステム:MoSculp

MoSculp: Interactive Visualization of Shape and Time (UIST 2018)

本論文はMIT CSAIL、Google、UCバークレー大学のチームから発表されたもので、2018年度のUIST会議でも報告された内容です。

この論文では、複雑な人間の動きを3Dモーションスカルプチャーで視覚化するシステムを紹介しています。これは、人体が空間を移動する際に、人体が動いた軌跡を構造化して出力する、新しい表現方法のようなもの、と理解した方が良いかもしれません。
本システムは入力のビデオ画像からモーションスカルプチャーを計算し、それを3Dでシーンに埋め込みます。更に面白いことに、ユーザーは彫刻を物理的に印刷することもできます。インタラクティブなインターフェイスにより、ユーザーは材料や照明条件を選択することで、彫刻デザインをカスタマイズできると主張しています。
このワークフローを提供するために、一連の2D画像から人間の3Dジオメトリを経時的に推定するアルゴリズムを導入し、彫刻を元のビデオに挿入する3D対応の画像ベースのレンダリングアプローチを開発しています。この一連のプロセスの自動化により、プロのアーティストの領域からモーション彫刻の作成を取り除き、幅広い既存のビデオ素材に適用できるようにする、という構想だそうです。

動画を見ると、様々なユースケースが提示されており、非常に面白い内容になっているので、ぜひ見ていただけると良いかと思います。

[1] : Zhang, X., Dekel, T., Xue, T., Owens, A., He, Q., Wu, J., … & Freeman, W. T. (2018, October). MoSculp: Interactive Visualization of Shape and Time. In The 31st Annual ACM Symposium on User Interface Software and Technology (pp. 275-285). ACM.

URL : https://dl.acm.org/citation.cfm?id=3242592

初心者が更に簡単に電子工作できるようになるインタラクティブなチュートリアル

ElectroTutor : Test-Driven Physical Computing Tutorials

本論文に関する内容はAutodeskに所属する研究者が開発し、UIST 2018年度で報告されています。

現在、ArduinoやRasberry Piなどの物理的なコンピューティングシステムを作成するためのさまざまなツールが開発されていますが、この分野で最初の一歩を踏み出すことは初心者にとって難しい課題です。今まで触れた事がないひとが多く、思った以上に閾値が高く見えてしまうからかもしれません。

この論文では、ユーザーをより適切にサポートするためのインタラクティブな新しいチュートリアルシステムを紹介しています。これらのチュートリアルは、ユーザーが続行する前に個々の手順を確認して理解するのに役立つインタラクティブなテストをチュートリアルプロセスに挿入してくれています。
彼らが提唱するElectroTutorでは、チュートリアルを完了する際、ユーザーの成功と自信が向上しており、さらに以前のチュートリアルのステップで発生したエラーのバックトラックとトラブルシューティングの必要性が減ることも実証しており、時間を節約できることを実証しています。
ただ論文中の今後の課題の部分では、サンプル数が少なかったことにも触れています。
今後さらに改善することで、様々な拡張の可能性を感じさせてくれる内容になっています。

[1] : Warner, J., Lafreniere, B., Fitzmaurice, G., & Grossman, T. (2018, October). ElectroTutor: Test-Driven Physical Computing Tutorials. In The 31st Annual ACM Symposium on User Interface Software and Technology (pp. 435-446). ACM.

URL : https://dl.acm.org/citation.cfm?id=3242591

糸がインターフェースに変えられる「RESi」とは

RESi: A Highly Flexible, Pressure-Sensitive, Imperceptible Textile Interface

Media Interaction Labが開発し、UIST(ACM User Interface Software and Technology Symposium)の2018年度でも発表された新しいテキスタイルのセンシングインターフェースを紹介します。

この論文では、導電性の糸が圧力によって抵抗変動するという原理を使った、新しいセンシングアプローチであるRESi(抵抗性tExtileセンサーインターフェイス)を紹介しています。
この技術のコア部分は、導電性と抵抗特性を備えた新しく設計された糸であり、糸が圧力センサーとしてどのように使用できるかを示すため、様々な実験を論文中では実施しています。
さらに、ラピッドプロトタイピングを可能にするため、汎用性を示すために、API(アプリケーションプログラミングインタフェース)を開示しており、手縫い、ミシン縫い、織りなど、さまざまな繊維製造技術で作成したアプリケーションを紹介しています。

課題は、論文中にも上げられていますが、特に温度変化による抵抗変動や、洗濯による耐性など、糸が日常に晒されるストレス部分を中心に今後は検証していくようです。この辺りの技術開発が可能になれば、日常のオブジェクト、絨毯やソファといった、我々の身の回りにあるものが、インターフェースに変わり、ますます生活のエクスペリエンスが変化していくかもしれません。

[1] Parzer, P., Perteneder, F., Probst, K., Rendl, C., Leong, J., Schuetz, S., … & Haller, M. (2018, October). RESi: A Highly Flexible, Pressure-Sensitive, Imperceptible Textile Interface Based on Resistive Yarns. In The 31st Annual ACM Symposium on User Interface Software and Technology (pp. 745-756). ACM.

URL : https://doi.org/10.1145/3242587.3242664

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