家の中をスマート化する安価な手法:Vibrosightとは

Vibrosight: Long-Range Vibrometry for Smart Environment Sensing

本論文はUIST 2018年度で報告されています。

スマートホームと呼ばれる構想では、誰がどの場所で何をしているか、などと行った電化製品の使用環境や、人間の活動を即座に検出する機能が必要です。これを実現するには電化製品を「スマート」にアップグレードするか、センサーを既存のオブジェクトに取り付ける必要があります。これらのアプローチは、費用がかかる上に、メーカーなどの企業側の思惑が見え隠れする、という課題があります。
本論文では、長距離レーザー振動計を使用して、部屋全体の活動を検知する新しいアプローチであるVibrosightを紹介しています。マイクとは異なり、このアプローチは特定のポイントで物理的な振動を感知できるため、他の活動やノイズの多い環境からの干渉に対してロバスト性がある、と主張しています。
また、このシステムにより、同時アクティビティの検出が可能になります。一連の評価を通じて、Vibrosightは長距離で高い精度を提供し、センサーを目立たない場所に配置できることを示しています。

論文中では課題にも触れており、レーザーの安全性や、検出システムをタグから見える位置におく必要があったり、複数のオブジェクトを同時に監視することはできない、などが挙げられていますが、最も重要な安全性面を考慮すると、消費者にリーチするには、もう少し時間がかかると思いますが、研究のアイデアは非常に優れていると思います。

[1] : Zhang, Y., Laput, G., & Harrison, C. (2018, October). Vibrosight: Long-Range Vibrometry for Smart Environment Sensing. In The 31st Annual ACM Symposium on User Interface Software and Technology (pp. 225-236). ACM.

URL : https://dl.acm.org/citation.cfm?id=3242608

デジタルモデリングと物理モデリングを統合する新しい手法:ShapeMe

Shape-Aware Material: Interactive Fabrication with ShapeMe

本論文はUIST 2018年度で報告されたものです。

パリ科学大学の研究チームが提唱しているShapeMeは、新しい統合システムです。
ユーザーがさまざまなオブジェクト形状に対応できるように、カスタマイズされた埋め込み可能なセンサーを生成できるソフトウェアツールキットが含まれており、ベースとなる素材を自由にカットできる優れものです。
デザイナーが物理的なプロトタイプに取り組んでいるとき、ツールキットはアーティストの物理的な変更をその場で検証できることがメリットだそうです。

重要なコスト面に関しても配慮しており、安価で、製造が簡単なインクジェット印刷技術を使用して、組み込みセンサーを作成しており、線形予測モデルの作成に成功しています。原理は論文を読むとわかりますが、テストパターンと作成パターンを比較すれば一目瞭然で、電気的、物理的にも非常に理にかなったものと想像されます。

建築モデルなどのマルチオブジェクト構造のモデリングや、上下に積み重ねられた複数のレイヤーで構成される3Dモデルのアプリケーションシナリオを示しており、個人的には非常に面白い研究だと思います。彼らの提唱する方法はデジタルモデリングと物理モデリングを統合するための新しい手法を実証し、形状認識マテリアルを作成するための新規な手法になりそうです。

[1] : Wessely, M., Tsandilas, T., & Mackay, W. E. (2018, October). Shape-Aware Material: Interactive Fabrication with ShapeMe. In The 31st Annual ACM Symposium on User Interface Software and Technology (pp. 127-139). ACM.

URL : https://dl.acm.org/citation.cfm?id=3242619

大規模な構造物を3Dプリンターで制作できるトータルシステムとは

TrussFormer: 3D Printing Large Kinetic Structures

本論文はUIST2018年度に報告された内容です。

本論文で提唱しているTrussFormerとは、ユーザーが大規模な運動を伴う構造や動的な力に対処する構造を3D印刷できる統合システムで、3Dプリントされたコネクタとヒンジ、ペットボトルから構造ができています。
論文中では、6脚歩行ロボットや5自由度の高さ4mのアニマトロニクス恐竜など、いくつかのサンプルオブジェクトを使用してTrussFormerをデモしています。

こういった大規模なファブリケーションは、テーマパークや展示物など、比較的大きい構造物のプロトタイピングには有効かもしれません。デザイナーがどう行った動きをするのか、自分の頭のイメージと実物を比較できるため、アニメーションの修正や再構築が容易になりそうです。

[1] Kovacs, R., Ion, A., Lopes, P., Oesterreich, T., Filter, J., Otto, P., … & Baudisch, P. (2018, October). Trussformer: 3d printing large kinetic structures. In The 31st Annual ACM Symposium on User Interface Software and Technology (pp. 113-125). ACM.

URL : https://dl.acm.org/citation.cfm?id=3242607

レーザーを用いた紙上への直接書き込みパターニングプロセス

a : 紙基材に直接レーザー書き込みMCGパターニングプロセスを行い、作成された折り紙構造の光学写真
b : MCG複合材料へのレーザー変換プロセスの簡略化されたMCGプロセスの概略図
(共に[1]のFigure 1より引用)

消費者が最も身近な素材とプロセスで制作できるようにするために、多目的で低コストの製造プロセス/材料は、ペーパーエレクトロニクスの開発に不可欠です。

UCバークレーの研究チームらが、紙上に直接導電性モリブデンカーバイドグラフェン(MCG)複合材料を作成するために、レーザーを用いた直接書き込みパターニングプロセスを開発した、と報告しています。
階層的に多孔質のMCG構造は、モリブデンイオンを含むゼラチン媒介インクに浸した繊維紙から変換されます。

結果として得られるモリブデンカーバイドとグラフェンの複合材料は、電気化学イオン検出器やガスセンサー、エネルギーハーベスター、スーパーキャパシタなど、さまざまな潜在的な用途に対して機械的に安定であり、電気化学的に活性だそうです。実験的に、複合材の電気伝導率は機械的変形に対して弾力性があり、180回繰り返し折り畳み試験を750サイクル行った後の劣化は5%未満だそうです。

紙上のMCGの直接レーザー変換は、3D折り紙の折りたたみ構造を含む紙ベースの電子機器に適用できると主張しています。

[1] : Zang, X., Shen, C., Chu, Y., Li, B., Wei, M., Zhong, J., … & Lin, L. (2018). Laser‐Induced Molybdenum Carbide–Graphene Composites for 3D Foldable Paper Electronics. Advanced Materials30(26), 1800062.

URL : https://onlinelibrary.wiley.com/doi/abs/10.1002/adma.201800062

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