埋め込みソフトセンサーとニューラルネットワークを使用したソフトロボットの知覚

Soft robot perception using embedded soft sensors and recurrent neural networks

最近の研究では、繊細な材料の取り扱いや人間との安全な相互作用などの用途向けに、柔らかく伸縮性のある材料で構成される、生物学的に着想を得たソフトロボットの設計が検討され始めています。
ただし、従来ロボットで使用されていた固体センサーは、ソフトシステムの高次元な変形をキャプチャできません。組み込みソフトや抵抗センサーは、この課題に対処する可能性があります。ただし、ソフトセンサーとそれを収容する動的システムの両方は、非線形の時変挙動を示すことが多く、モデル化が困難です。さらに、センサーの設計、配置、および製造の問題には、多くの人間の入力と事前の知識が必要です。

本研究は、人間の知覚システムからインスピレーションを得て、合成アナログシステムを作成したと報告しています。この合成システムは、ソフトアクチュエータに埋め込まれたセンサーネットワークと、画像データベースのモーションキャプチャシステム、および一般的な機械学習アプローチを使用してモデルを構築した、と報告しています。
提案しているアプローチは、リアルタイムでソフト連続体アクチュエータの運動学をモデル化できることを実証しています。さらに、外部システムと相互作用しながら、同じシステムがどのように加えられた力を推定できるか、知覚における行動の役割も示す、と報告しています。

論文中において、ビジョン、慣性測定ユニット、力などの他のセンシングモダリティをソフトシステムに統合したいと記載しており、人間とロボットの相互作用、ソフト装具、ウェアラブルロボットなどのさまざまなアプリケーションに役立つと主張している本研究の進化が楽しみです。

[1] : Thuruthel, T. G., Shih, B., Laschi, C., & Tolley, M. T. (2019). Soft robot perception using embedded soft sensors and recurrent neural networks. Science Robotics4(26), eaav1488.

URL : https://robotics.sciencemag.org/content/4/26/eaav1488

身につけるだけで3次元の複雑な変形状態を測定可能な伸縮性のデバイス技術

Deformation Capture via Soft and Stretchable Sensor Arrays

ETHらのグループはACM Transactions on Graphicsにて、伸縮する中空構造のエラストマーセンサを、サポータのように身につけるだけで3次元の形状変化状態を取得する手法を提案しました。

このセンシングデバイスはPDMSなどの伸縮性の材料上にカーボンとシリコーン材料を混ぜ合わせた伸縮性の電極材料を両面にパターニングすることによって構成されています。

このような構造のシートは電極が重なった部分が静電容量センサとして働きます。このセンサは伸びることで電極の面積が大きくなり、厚みが薄くなるため変形状態を静電容量の変化として捉えることができます。

この技術はStretchSense社, ElastiSense社, バンドー化学株式会社といった企業でもいわゆるストレッチセンサとして用いられています。

今回の研究では非常に簡単なセットアップでこれらのデバイスを構成しています。PDMSシートをバーコーティングで作った後に前面に同様に伸縮性電極を塗布した後にレーザーカッターで適切な出力で照射することでパターンを作ることに成功しています。(このテクニック自体は昔から知られているものです。)

今回の研究ではこのセンサの信号を適切に処理することでマーカーとカメラシステムに近い精度で三次元の変形を捉えられることを示しています。またカメラのシステムとは異なり、マーカーなどが外部に露出していなくても測れるといったことが利点となっています。

信号処理もリアルタイムで3次元形状の変化を描画することに成功しており、ヘルスケアやスポーツ科学といった様々な領域で応用が期待できそうです。

[1]Glauser, O., Panozzo, D., Hilliges, O., & Sorkine-Hornung, O. (2019). Deformation capture via soft and stretchable sensor arrays. ACM Transactions on Graphics (TOG)38(2), 16.

URL:https://dl.acm.org/citation.cfm?id=3311972

歩いて転がって飛び跳ねるミニソフトロボットの開発とその転用範囲

A mini, magnetic, all-terrain robot

本記事は、2018年に科学技術雑誌 Nature に掲載された論文を元に、その研究背景と論文内容、今後の展望を書いたものです。

冒頭の動画およびこの記事で紹介する論文では、非常に小さなソフトロボットを提案しています。
映像をみるとわかりますが、このソフトロボットは、実際に歩くだけでなく、転がる、ジャンプする、泳ぐことができます。これは、人体内部の驚くほど厳しい地形をナビゲートするのに役立つ、と主張しています。
一般に小さなロボットは、その筐体の小ささのおかげで、応用範囲が広く、細胞操作やバイオセンシングをはじめ、人体内、血液中などの輸送を考えると薬物伝達や低侵襲手術なども可能になる技術であり、現在開発が進められている、と言うのが背景になります。

本論文で提案しているロボットは、柔らかい活性物質で構成されており、磁気的に作動して、所望の時に形状が変化します。
ロボット設計と動作入力によって、マルチモーダルな移動を実現でき、異なる地形におけるプログラムされたボディ変形と剛体回転特性を同時に考慮しています。
特に磁気作動は、ほとんどの生物学的および合成材料に簡単かつ無害に浸透できるそうで、医療用途をはじめとしたさまざまな用途に適していると主張しています。同時に理論モデルの構築及び実証を行っており、異なる寸法のロボット間で行われた広範な実験的特性とそれらを比較しています。
一般に、波状の水泳運動を除き、実験データはモデルとよく一致するようで、これらの分析は、マルチモーダル移動を行う将来のミニチュアロボットのパフォーマンスを最適化するための有用な設計ガイドラインにもなります。

こういったソフトロボットに使用される材料と、筐体変形や駆動に使用するトランスデューサー、その動力源における研究が進むにつれ、医療やバイオセンシング領域の技術進歩はさらに進化するように思えます。

[1] : Hu, W., Lum, G. Z., Mastrangeli, M., & Sitti, M. (2018). Small-scale soft-bodied robot with multimodal locomotion. Nature554(7690), 81.

URL : https://www.nature.com/articles/nature25443

東京大学が開発したリラックスするための呼吸リズムを制御できるクッションデバイスとシステム

Relaxushion: Controlling the Rhythm of Breathing for Relaxation by Overwriting Somatic Sensation [1]

東京大学の研究チームが、体感を上書きすることにより、リラクゼーションのために呼吸のリズムを制御する方法を提案し、その研究成果を2018年度のSIGGRAPH Asiaで報告しています。

呼吸は、心身の状態を制御する上で重要な役割を果たすことは自明であり、今まで成されてきた多くの研究が、光、音、振動などを使用して呼吸リズムを指示しようとしていました。
ただし、これらのアプローチでは、ユーザーの呼吸リズムをシステムに合わせて調整するための事前トレーニングが必要です。

本研究では、呼吸リズムの制御の有効性を改善するために、体感を上書きするアプローチに焦点を当てています。 ユーザーがデバイスの動きを呼吸の動きと混同した場合、呼吸のリズムを変更できると仮定し、呼吸運動を提示するクッション型デバイス「Relaxusion」を開発したと報告しています。

この呼吸用クッションを抱きしめると、私たちは胃に手を置くように感じます。 簡単なユーザー調査では、事前のトレーニングやデバイスへの意識なしで、この方法で呼吸のリズムを制御できることが示された、と主張しています。

[1] : Ban, Y., Karasawa, H., Fukui, R., & Warisawa, S. I. (2018). Relaxushion: controlling the rhythm of breathing for relaxation by overwriting somatic sensation. In SIGGRAPH Asia 2018 Emerging Technologies (pp. 1-2).

URL : https://www.semanticscholar.org/paper/Relaxushion%3A-controlling-the-rhythm-of-breathing-by-Ban-Karasawa/6d49523c28ca6423c7b72aeb8f3ea86d3b14e680

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