ARとインタラクティブなデバイスを組み合わせた没入感のある3Dモデリング手法

DesignAR: Immersive 3D-Modeling Combining Augmented Reality with Interactive Displays [1]

Virtual Reality(VR)やAugmented Reality(AR)といった、人工現実から拡張現実の技術が広がるにつれて、3Dモデルの設計方法やワークフローが進化しています。最初のGUI(グラフィックユーザーインターフェース)は当然のように二次元でしたが、VRやARの領域では、Tilt Brushをはじめとした商用ツールの開発も進んでおり、3Dモデルを作成するための新しい設計手法が様々開発されています。

本論文では、3Dモデルを作成するための拡張設計ワークステーションであるDesignARを紹介しています。提案しているアプローチは、2Dビューを表示するインタラクティブサーフェスと、ヘッドマウントの立体拡張現実(AR)をシームレスに統合したものだそうです。
これによって、画面スペースを拡張し、表示境界を越えて3Dオブジェクトを配置できるようにする出力スペースが生成され、 2Dビューと3Dビューの効果的な組み合わせのために、異なるレベルの近接性とアライメントを定義しています。
入力に関しては、マルチタッチとペンで、空中VR / ARインタラクションにより、一般的に見られる精度と人間工学の問題を軽減すると主張しており、フィードバックを即座に行うペンおよびタッチテクニックのセットを提案しています。実際に制作したプロトタイプに基づいて、この新しいタイプのディスプレイ拡張に関する課題と洞察について報告しています。

ただ、論文中にも言及されているように、課題は多く、HoloLensをはじめとしたARデバイスのDisplayの解像度や、FOVと言われる視野角、またインタラクションの設計や、ARで見ている画像と書いている軌跡の誤差やレイテンシーなど、多く挙げられており、今後の技術進化が必須だと想定されます。

高解像度、高精度のインタラクティブサーフェスと、調整されたARビューを組み合わせることにより、将来の作業および設計環境、拡張ディスプレイと呼ばれる領域の可能性が広がって、ユーザーのクリエイティビティが上昇する世界が待ち遠しく感じます。

[1] : Reipschläger, P., & Dachselt, R. (2019, November). DesignAR: Immersive 3D-Modeling Combining Augmented Reality with Interactive Displays. In Proceedings of the 2019 ACM International Conference on Interactive Surfaces and Spaces (pp. 29-41). ACM.

URL : https://dl.acm.org/citation.cfm?id=3359718

肌に貼れる新しいHaptics deviceがNatureに掲載されました

Haptic Skin: A virtual sense of touch

本論文は2019年11月にNature誌からPublishされたもので、本記事は論文の概要を説明したものです。

本論文における研究背景となる仮想現実(VR)と拡張現実(AR)の従来の技術は、人間の五感に纏わる感覚を、擬似的に再現する視覚および聴覚刺激を通じて、人間に新しい体験を与えてくれます。
現在最も広く普及しているVRおよびARシステムに関しては主に視覚と聴覚をベースに研究開発されているものが多数です。今回の研究で着目しているのは、皮膚であり、VRとARテクノロジーの比較的未熟な感覚インターフェースですが、それでもコミュニケーション、エンターテイメント、医療などの分野に直接関連して、質的なレベルで体験を大幅に向上させることができる、と主張しています。

本論文では、電子システムと触覚(つまりタッチベース)インターフェースにおけるワイヤレスかつバッテリー不要のプラットフォームを紹介しています。これは、皮膚の曲面に、層構成した積層型デバイスを用いて、触れている部分に対する局所的な機械的振動をプログラマブルに与えることで、情報を伝達することができルものです。

FIgure 1. スクリーン上に映った別の人の皮膚を触るユーザー(Left)
触られた側人は、スクリーンに連動してデバイスのアクチュエータが振動し、触れられているように感じる(Right)

図1では、本論文でのユーザーエクスペリエンスを紹介しています。図からわかるように、体験としては、振動アクチュエータが、デバイスを装着している人の皮膚に振動を加え、仮想的な触覚を提供する、というものです。このデバイスは、皮膚に柔らかくラミネートする軽量の電子シートで構成されており、アクチュエーターの色は、低(黄色)から高(赤)までの作動度を表すそうです。
このプラットフォームの基盤となる材料、デバイス構造、電力供給、および通信スキームについて説明しています。実際の構成に関しては、論文を参考にすると良いですが、多層構成になっているものの、特段入手しにくい材料が見られる訳ではありません。

この技術によって提供できるユーザーエクスペリエンスとして、ソーシャルメディアや個人のエンゲージメント、義肢の制御とフィードバック、ゲームやエンターテイメントのアプリケーションなどだそうです。現在他の技術でも実証されているように、皮膚が電子的にプログラム可能な通信と身体への感覚入力チャネルを提供するといった動きをさらに加速させてくれる可能性を感じます。

[1] : Yu, X., Xie, Z., Yu, Y. et al. Skin-integrated wireless haptic interfaces for virtual and augmented reality. Nature575, 473–479 (2019)

関連記事URL:https://www.nature.com/articles/d41586-019-03506-3
論文URL : https://www.nature.com/articles/s41586-019-1687-0

複数マテリアルを複数ノズルで3Dプリンティングする手法がNatureから発表されました

Voxelated Soft Matter via Multimaterial, Multinozzle 3D Printing [1]

Harvard John A. Paulson School of Engineering and Applied Science(SEAS)とWyss Institute for Biologically Inspired Engineeringの研究者は、複数のマテリアルを複数のノズルを使った3Dプリンティングを用いて柔らかい物質を作成する手法を開発し、Natureにて発表しました。

現在、インクジェットベースの3Dプリンティングは、高精度で物体を作成できる広く採用されている方法ですが、印刷を成功させるために低粘度インクを使用する必要があります。対照的に、押し出しベースの3D印刷方法であるDirect Ink Writing(DIW)は、はるかに広範な材料をパターン化することができます。ただし、単一素材を制作はできますが、マルチマテリアルの物質を生成することは困難でした。
本研究では、材料の組成、機能、構造をプログラムしたマルチマテリアルマルチノズル3D(MM3D)印刷を使用して、ソフトマテリアルの設計と製造を報告しています。本研究で報告しているヘッドは、複数の粘弾性材料が接合部で収束するときに発生するダイオードのような動作を利用して、最大8つの異なる材料間でシームレスな高周波スイッチングを可能にしており、ノズル直径の立方体に近い体積の物体を作成しています。実際に周波数を変えて物体を作っているので、非常に面白い取り組みと言えます。

具体的なアプリケーション例として、折り紙パターンと、数桁異なる剛性の複数のエポキシおよびシリコーンエラストマーインクを同時印刷することで移動するソフトロボットを製作し、動画内にも示されています。

この研究で示されている手法は、複雑なモチーフで設計および製造できる材料のライブラリを大幅に広げると同時に、複数のマテリアルを同時に編み込めることで、適用できるデバイスの可能性が広がるため、非常に可能性がある技術だと言えます。

[1] : Skylar-Scott, M. A., Mueller, J., Visser, C. W., & Lewis, J. A. (2019). Voxelated soft matter via multimaterial multinozzle 3D printing. Nature575(7782), 330-335.

URL : https://www.nature.com/articles/s41586-019-1736-8

ラピッドプロトタイピングを可能にする設計サポートツール

Tactlets: Adding Tactile Feedback to 3D Objects Using Custom Printed Controls [1]

3Dプリンティングの技術革新に伴って、インタラクティブなオブジェクト作成をユーザー側が手軽に行えるようになってきています。
本論文では、インタラクティブなオブジェクトに対する入力と出力のため、つまり素早いプロトタイピングに対する新しいデジタル設計と製造アプローチであるTactlets(タクトレット)を紹介しています。
このツールを使用すると、さまざまな3Dオブジェクトに対して、電気触覚出力とタッチセンシングのラピッドプロトタイピングが可能になります。また、リアルタイム設計モードは、物理プロトタイプを使用した実地テストと設計の改良をサポートしてくれるツールであり、個人的にはこの機能は非常に有効なものだと思います。
実際、ユーザーを対象とした実証研究の結果は、さまざまなオブジェクトジオメトリでのセンシングと触覚出力の技術的機能を確認しています。同時に、論文の最後に、この手法を使ったアプリケーション事例、15の商品のプロトタイプを通じた学びと、この手法の課題を記載していますので、ご興味のある方はぜひご確認いただければと思います。

今後は、追加のセンシング機能を統合する方法などを検討すると記載しており、ますます様々なセンサをすぐ形にして、すぐ確認できるラピッドプロトタイピングが可能になる世界が来れば、実際に商品を出荷する前に何度でもユーザーテストが可能になりそうです。

尚、本論文は2019年度のACM Symposium on User Interface Software and Technology(通称UIST)に寄稿されたものです。

[1] : Groeger, D., Feick, M., Withana, A., & Steimle, J. (2019, October). Tactlets: Adding Tactile Feedback to 3D Objects Using Custom Printed Controls. In Proceedings of the 32nd Annual ACM Symposium on User Interface Software and Technology (pp. 923-936). ACM.

URL : https://hci.cs.uni-saarland.de/research/tactlets/

1 45 46 47 48 49 50 51 86