擦ったところだけ透明になる自己的に情報を秘匿するフィルムデバイス

クレジットカードの情報やマイナンバー私達の周りには参照はしたくても情報を隠したいような番号が多く存在しています。

Beihang Universityのチームは、摩擦によって発生したエネルギーにより、電気的に透過度を変化させる機能を内包したフィルムを作成し、著名な学術雑誌ADVANCED MATERIALSに掲載されました。

このフィルムはその部位を擦ることで摩擦による電気を発生させ、その力によってフィルムの透過度を変える機能を内包しています。

Self-powered Optical Switchと呼ばれるこのデバイスは、光の透過度をコントロールするために、摩擦による発電層とPDLC(polymer dispersed liquid crystal)による電界により電気の透過度が変化する層より構築されています。

PDLCは過去に紹介した下の記事でも用いられています。

論文中では、PET、Al、PU Sponge、Nitrille、Nylonといった様々な擦る材料の違いにより生じる電荷量の違いや、そこで生じる起電力と透過率の関係などを調べています。

今回提案されたフィルムでは50V 程度で下の写真のような透過度に違いが認められるようです。

[1]のFigure.3 (d)より引用

必要なときにだけ指で擦り、QRコードを読み込むといったストーリーが語られていました。IoTをはじめ多くのデバイスではバッテリー問題が課題となりますが今回のデバイスは天候に左右されないこと、構造的にロバストであり非常に小さく実装できることなどがメリットになりそうです。

摩擦発電の技術はエナジーハーベストとしても注目されていますがこのような小さなフォームファクターの物体のトリガーとして使用するもの良いかもしれないですね。

[1]Zhang, C., Guo, Z., Zheng, X., Zhao, X., Wang, H., Liang, F., … & Zhu, G. (2019). A Contact‐Sliding‐Triboelectrification‐Driven Dynamic Optical Transmittance Modulator for Self‐Powered Information Covering and Selective Visualization. Advanced Materials.

URL:https://onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.1002/adma.201904988

体温によって変形する新しい電子デバイスシステムとは

Transformative Electronics Systems to Broaden Wearable Applications

本論文はKorea Advanced Institute of Science and Technology(通称KAIST)の研究チームらが発表し、Science Advancesに寄稿されたものです。

最新のエレクトロニクスは、特定の目的に役立つ機械的特性を持っています。例えば、硬い電子機器は、ユーザーフレンドリーで便利なインターフェースを提供しています。逆に、柔らかく、伸縮可能な電子機器は、身体の自然な形に対応する能力により、快適性、携帯性、および生理学的なモニタリングの容易さを実現するウェアラブルおよび埋め込み型アプリケーションに適しています。
上記の例から分かるように、硬いデバイスは硬いデバイスの役割、柔らかいデバイスは柔らかいデバイスに特化したアプリケーションがあります。

本論文では、硬いデバイスとソフトマテリアルデバイスの両方の重要な機能を活用するために、目的のアプリケーションの必要に応じて形状と剛性を変換できる、新しい変形可能な電子システムを提唱しています。
今回提唱している変形可能な電子システムは、有機および無機材料で作られた伸縮可能な電子機器と互換性のあるプラットフォームだそうです。また、使用しているガリウムは、体温を通じて電子機器の形状と剛性を調整できるため、ウェアラブルおよび埋め込み型電子機器に変換できるとのことです。

さらに、異なる遷移温度を必要とするアプリケーションでは、ガリウムの代替品として他の種類の可融合金を使用できるようです。つまり、使用する材料を考慮すれば違う形のアプリケーションで使用できるプラットフォームのようなシステムである、ということが背景にあるようで、今回の論文で提唱したシステムはTransformative Electronic System(TES)と呼んでいます。

動画では体温で変化する電子デバイスを紹介していますが、論文中には今回使用しているガリウム材料の想定変形メカニズムに加え、相転移温度など、データセットも充実しているため、興味がある方は論文をご参照いただければと思います。

[1] * Byun, S. H., Sim, J. Y., Zhou, Z., Lee, J., Qazi, R., Walicki, M. C., … & Gereau, G. B. (2019). Mechanically transformative electronics, sensors, and implantable devices. Science advances5(11), eaay0418.

URL : https://advances.sciencemag.org/content/5/11/eaay0418/tab-pdf

NTTと北海道大学の研究チームが眼鏡不要のテーブル3Dディスプレイを提案

Interactive 360-Degree Glasses-Free Tabletop 3D Display [1]

NTTと北海道大学の研究チームが、円形のテーブルでの複数人の共同作業のためのインタラクティブな360度の卓上ディスプレイシステムを提案しました。
ユーザーは3Dメガネなしで、テーブルの周りからテーブルトップディスプレイ上の3Dオブジェクトを見ることができます。

このシステムは視覚知覚メカニズムを使用して、以前の作品よりも少ないプロジェクターで水平方向の滑らかな運動視差を実現します。テーブルの上に取り付けられた360度カメラと画像認識ソフトウェアが、テーブル上のユーザーの位置と、テーブルをリアルタイムで移動する際の顔(目)の高さを検出し、異なるユーザーに対して正しい垂直および水平方向の運動視差を同時に表示するのに役立つそうです。
更に、このシステムには、テーブルに表示される3Dオブジェクトを操作するタブレットデバイスとのユーザーインタラクション機能もあり、共同作業とユーザー間のコミュニケーションをサポートします。プロトタイプシステムを実装し、360度の卓上ディスプレイシステムの共同機能を実証しました。

将来的には、コミュニケーションと共同作業が重要なさまざまなシーン(製品設計、教育、医療シミュレーションなど)に適用するために、システムを使用して画面の品質を改善し、インタラクションを拡大することを目指しているそうです。

[1] : Makiguchi, M., Sakamoto, D., Takada, H., Honda, K., & Ono, T. (2019, October). Interactive 360-Degree Glasses-Free Tabletop 3D Display. In Proceedings of the 32nd Annual ACM Symposium on User Interface Software and Technology (pp. 625-637). ACM.

URL : https://dl.acm.org/citation.cfm?doid=3332165.3347948

体温を利用して体型にフィットする繊維が開発されました

University of Minnesota invention: shape-changing textiles powered only by body heat

この記事は、ミネソタ大学のチームによって開発された、温度によって形状が変化する性質を利用した体の表面にフィットする繊維に関する論文を元にした内容です。

研究背景として、スマートウェアラブルの分野において、人間の体型に動的にフィットすることが求められており、体型にフィットすることによってソフトウェアラブルロボティクス、ヘルスモニタリング、および触覚フィードバックシステムを含むアプリケーションにとっては非常に重要な分野である、と位置付けています。
これらのアプリケーションは、機能の知覚のために、身体自体に衣服が近接することと、衣服そのものの剛性を同時に両立することが求められています。
本論文では、着用者の体の形状とサイズに動的に適合するNi-Tiベースの形状記憶合金(SMA)ニットアクチュエータで構成された衣類の設計、製造、および検証内容を報告しています。

論文では、新しい衣服の製造と応用戦略を可能にするため、衣服の設計を通じて体型へのフィッティングを行い、調整可能なNiTiベースのSMA作動温度を提供することで、人間の皮膚の表面での作動を可能にすると主張しています。
ただ動画内や論文から考察すると、実用化まではまだ技術改善の余地があるようには思えますが、研究目的の1つである、材料及び構造自体の動的な変形による人体へのフィッティングは、実生活上のアプリケーションを考えると必須ですので、今後の研究に期待できそうです。

[1] : Granberry, R., Eschen, K., Holschuh, B., & Abel, J. (2019). Functionally Graded Knitted Actuators with NiTi‐Based Shape Memory Alloys for Topographically Self‐Fitting Wearables. Advanced Materials Technologies.

URL : https://onlinelibrary.wiley.com/doi/abs/10.1002/admt.201900548

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