EPFLが開発した折り紙原理を利用したHCI用の新しいロボット

HCI(Human-computer Interactions)のためのポータブル3自由度力フィードバック折り紙ロボット
(論文[1]のSupplementary Video1より引用)

触覚インターフェースは、タッチ体験を再現でき、人間とロボットのインタラクションを向上させるために必要です。ただし、現在触覚インターフェイスは、非常に限られたタッチ感覚を引き出す電気機械デバイスか、より包括的な運動感覚の手がかりを提供する可能性のあるデバイスのいずれかです。同時に製造に関しても大量のコストがかかります。
また、フィードバックの豊富さとデバイスサイズの間には明確なトレードオフがあり、コンパクトなプラットフォームから複雑なタッチ感覚を作成する際の設計と製造の課題を解決する必要があります。

EPFLの研究チームが、フォースフィードバックロボットを小型化するという物理的な制限を克服するために、折り紙の設計原理を採用して、携帯性、精度、およびスケーラブルな製造を実現し、その研究成果をNature Machine Intelligenceに寄稿しています。

開発された折り畳み可能な折り紙ロボットであるFoldawayが、ポケットに収まるコンパクトなプラットフォームで3自由度のフォースフィードバックをレンダリングできるそうです。
このロボットプラットフォームは、ユーザーの指の動きを追跡し、最大2ニュートンの力を加え、1ミリメートルあたり最大1.2ニュートンの剛性を与えると報告しており、同時に論文中では、さまざまな人間と機械のインタラクションの評価のために実験しており、Foldawayプロトタイプの幅広い適用性を実証しています。

動画を見るとよくわかりますが、この折り紙インターフェースはジョイスティックの様なインターフェースには向いており、この論文で提唱している単位が最小単位なので、拡張性が非常に多く、コストメリットも大きい手法だと思われます。製造方法も論文中に記載があるので、興味がある方は一読ください。

[1] : Mintchev, S., Salerno, M., Cherpillod, A., Scaduto, S., & Paik, J. (2019). A portable three-degrees-of-freedom force feedback origami robot for human–robot interactions. Nature Machine Intelligence1(12), 584-593.

URL : https://www.nature.com/articles/s42256-019-0125-1?utm_source=twitter&utm_medium=social&utm_content=organic&utm_campaign=NRRJ_2_sjb_natmachintell_dechighlight2019

UCサンタバーバラらの研究チームが提案するソフトアクチュエータを利用したファブリック構造

「Fluidic Fabric Muscle Sheets for Wearable and Soft Robotics」の画像検索結果
Figure 1. FFMSが影響を受けた筋肉の概要図とFFMSを用いたプロトタイプ概要図 [1]
(論文[1]のFigure 1より引用)

ロボットシステムは、大きな表面積を持つ構造物を作動させたり、ウェアラブルな衣服を通して力を与えたり、自律型ロボットシステムを実現したりする用途にも使用される可能性があり、人体能力の拡張など、様々な用途が検討されています。。

UCサンタバーバラらの研究チームはFluidic Fabric Muscle Sheets(FFMS)と呼ばれるソフトアクチュエータの新しい構造を紹介しています。弾性チューブの配列に基づいて流体伝達を統合する複合ファブリック構造です。
これらのシート状のアクチュエータは、人体を含む任意の形状またはサイズの硬いまたは柔らかい物体に歪み、圧迫、曲げ、および順応することができます。生成可能な応力とひずみの分布を決定するコンピューター化された縫製技術を含む、簡単なアパレルエンジニアリング手法により、FFMSアクチュエーターを設計および製造する方法を示しています。

また、論文内では、パフォーマンスを予測するのに効果的であることが証明された単純な数学モデルを提示しており、FFMSは5 Hz以上の周波数で動作し、100%を超える工学的ひずみを達成し、重量の115倍以上の力を発揮するそうです。

様々なボディまたは構造を作動させ、曲げや形状の変化を含む多軸作動を実行する構成で、その汎用性を実証しており、ウェアラブルおよび生物医学用途の体組織に力を加えることができる、と主張しています。
小型の操縦可能なロボット、把持補助用の手袋、四肢に圧迫を加えるための衣服、局所的な皮膚の伸張を介して小さな身体領域または組織を作動させるための装置など、いくつかの潜在的なユースケースを示しています。

[1] : Zhu, M., Do, T. N., Hawkes, E., & Visell, Y. (2020). Fluidic fabric muscle sheets for wearable and soft robotics. Soft Robotics.

URL : https://www.liebertpub.com/doi/10.1089/soro.2019.0113

人工筋肉を用いた潰れても動作可能な虫型ロボット

Dielectric Elastomer Actuator( DEA)と呼ばれる人工筋肉を用いた虫型のロボットがスイスのEPFLのグループらによって発表されました。

DEAはエラストマー素材の両面を柔らかい電極で挟み込んだような構造をしており、電圧を加えると電極の両面に電荷が溜まり、極板間引力により変形します。

軽量でありながら、大きな変形と発生力を生み出すことが特徴ですが、このような優れた特性を発揮するには大きな電界(一般的に50MV/m以上)を加える必要がありました。EPFLのグループはこのDEAのエラストマー層を薄膜化することで低電圧化を図っています。

Fig.1 [1]のFig.1 より引用

その結果、昇圧回路が小型化され、バッテリーと共に搭載する事で虫型のロボットを提案しています。

過去に紹介した記事のようにDEAを用いて昆虫のように羽ばたくロボットが提案されていますが、これらの事例ではロボットはあくまで別の電源ソースと繋がっていました。今回は全てを搭載した独立した形で成立しているのが一つユニークな点になると思われます。

今回はDEAにより脚部を振動させる事で意図した方向に進むことができています。またアクチュエータ部分が柔らかい素材でできているため、潰されても壊れにくいといったユニークな特徴が強調されています。

論文中では薄膜化しいた際にも活用できる電極の組成やその特徴、動作時の共振周波数といったデータも記載されていますので興味のあるかたはぜひ原文[1]をお読みください。

詳細的にはこのようなアクチュエータを搭載した動作ステムが印刷などで安価で大量に作られる日がくるかもしれないですね。

URL:https://robotics.sciencemag.org/content/4/37/eaaz6451

参考文献

[1]Ji, X., Liu, X., Cacucciolo, V., Imboden, M., Civet, Y., El Haitami, A., … & Shea, H. (2019). An autonomous untethered fast soft robotic insect driven by low-voltage dielectric elastomer actuators. Science Robotics4(37).

高速で正確なポータブル診断のための多重電気化学センサープラットフォーム

eRAPID: a Platform for Portable Diagnostics [1]

電気化学センサは、糖尿病患者の在宅医療検査に進歩をもたらしましたが、他の病状の診断に対してはまだうまく活用されていません。これらのセンサは酵素の活性をベースにしていますが、人間の病状のマーカーを検出するための酵素の数は限られています。

ハーバード大学のWyss研究機構とSEAS(John A.Paulson School of Engineering and Applied Sciences)は、複雑な生体液中のアフィニティベースの電気化学検出により、在宅医療向けの多重化されたポイントオブケア診断が可能になる、と発表し、その研究成果をNature Nanotechnologyに寄稿しました。

提案しているeRapidは、低コストのアフィニティベースの電気化学センシングプラットフォームであり、わずか1滴の血液を使用して、複雑な生体液中の幅広いバイオマーカーを高い感度と選択性で同時に検出できるそうです。

標的バイオマーカーに固有のプローブが取り付けられた、新規の防汚ナノコンポジットコーティングが特徴で、ターゲットがプローブに結合すると、2番目のプローブを引き付けて、電気的に活性なコーティングされた電極表面に局所的な沈殿物の形成を引き起こす「サンドイッチ」を作成します。 生成される電気信号のサイズは、サンプルで検出されたターゲットの濃度と相関し、沈殿物が局所的に形成されるため、同じサンプルで多くの異なるバイオマーカーを並行してテストできるそうです。

[1] : https://wyss.harvard.edu/technology/erapid-multiplexed-electrochemical-sensors-for-fast-accurate-portable-diagnostics/

[2] : del Río, J. S., Henry, O. Y., Jolly, P., & Ingber, D. E. (2019). An antifouling coating that enables affinity-based electrochemical biosensing in complex biological fluids. Nature nanotechnology14(12), 1143-1149.

URL : https://www.nature.com/articles/s41565-019-0566-z

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