顔につける嗅覚を刺激する新しいインターフェースの提案

On-Face Olfactory Interfaces [1]

オンフェイスウェアラブルは現在、ピアス、入れ墨、またはユーザーを審美的に向上させるインタラクティブメイクアップに限定されており、香りのデリバリー方法にはほとんど使用されていません。 ただし、顔の香りのインターフェースは、鼻に近いため、他のモダリティや身体の場所に比べて、個人的な香りのデリバリーに有利です。

浙江大学とMIT Media Labの研究チームが、軽量で、皮膚に接着したり、メガネやピアスに取り付けたりできる、顔の嗅覚ウェアラブルを実現するための設計指針とプロトタイプを作成し、その成果を2020年度のCHI会議にて寄稿しています。

プロトタイプの使いやすさを評価するために、被験者同士の距離を近づけてペアでやり取りしながら、被験者内研究デザインの12人の参加者をテストしており、これらのデザインの2つを「オフフェイス」の嗅覚ネックレスと比較し、着用者と観察者の両方について、社会的な受容性、快適さ、および知覚されるにおいの強さを評価した結果を報告しています。

[1] : Wang, Y., Amores, J., & Maes, P. (2020, April). On-Face Olfactory Interfaces. In Proceedings of the 2020 CHI Conference on Human Factors in Computing Systems (pp. 1-9).

URL : https://dl.acm.org/doi/abs/10.1145/3313831.3376737

ファッションにテクノロジーを実装する新しいジッパー型デバイス:Zippro

Zippro: The Design and Implementation of An Interactive Zipper [1]

ジッパーは、私たちが日常的に使用するさまざまなオブジェクトで一般的です。 特にファッションアイテムやかばんなど、日常にジッパーは溢れています。

ダートマス大学らの研究チームは、テクノロジーとのシームレスな相互作用をサポートするために、このような一般的な日常活動をどのように利用できるかを調査した上で、マイコンを内蔵した新しいジッパーのプロトタイプであるZipproを開発し、その成果を2020年度のCHI会議に寄稿しています。

単純なジッパースライドだけでなく、ユーザーとデバイスとのインタラクションを自然な使用パターンに織り込む方法を検討しています。まず、2つのユーザー調査を実施して、人々がジッパーと通常どのようにやり取りするかを理解し、その上で、標準のジャケットジッパーで評価する、内蔵型プロトタイプジッパースライダーであるZipproの設計にフィードバックしています。

最後に、ジッパーを利用したいくつかのアプリケーションを示しており、テキスタイルやファッションでのIoTの文脈の広がりを感じさせてくれます。

[1] : Ku, P. S., Gong, J., Wu, T. Y., Wei, Y., Tang, Y., Ens, B., & Yang, X. D. (2020, April). Zippro: The Design and Implementation of An Interactive Zipper. In Proceedings of the 2020 CHI Conference on Human Factors in Computing Systems (pp. 1-13).

URL : https://dl.acm.org/doi/abs/10.1145/3313831.3376756

タコの足と吸盤を模擬したソフトアクチュエータの開発

Octopus-inspired soft robot [1]

タコは、その器用さ、柔軟性、および握力により、先細のアームを使用してすべての形やサイズの獲物を捕らえることができます。

ハーバード大学のWyss研究所とSEAS(工学/応用科学スクール)の研究チームは、独特の円錐形状を示すソフトアクチュエーターの設計の有用性を調査し、タコにインスパイアされた円錐形のアクチュエーターを開発し、その成果をSoft roboticsに寄稿しています。

このアクチュエータは、テーパー角度を変更するだけで調整できる幅広い範囲の曲率を示し、円筒形のものと比較して柔軟性が高いそうです。

ソフトアクチュエーターの機能をさらに拡張するために、真空作動の吸盤をアクチュエーターに組み込んで、完全に統合されたタコの腕からヒントを得たグリッパーを製造し、柔軟性が向上しているため、吸盤付きのこれらのテーパーアクチュエーターは、円筒形の対応物よりも優れたグリップ力を持つことを検証しています。

また、適切なテーパー角度を選択することにより、吸盤付きのテーパーアクチュエーターが非常に広い範囲のオブジェクトをグリップ、移動、配置できることを示しています。研究結果は、形態学的に多様なオブジェクトを幅広く把持するための次世代のソフトアクチュエータの作成に関する新しい設計の洞察を提供するだけでなく、タコの種全体の腕のテーパー角度の変動の機能的重要性の理解にも貢献した、としています。

[1] : https://wyss.harvard.edu/news/the-tentacle-bot/

[2] : Xie, Z., Domel, A. G., An, N., Green, C., Gong, Z., Wang, T., … & Wen, L. (2020). Octopus Arm-Inspired Tapered Soft Actuators with Suckers for Improved Grasping. Soft Robotics.

URL : https://www.liebertpub.com/doi/10.1089/soro.2019.0082

Artificial Skin:生体模倣設計によりロボットの把持機能が向上

ロボットハンドにとって柔らかいモノの把持やハンドリング操作は重要な課題となっています。これまでもセンシングを工夫したり、柔らかい素材や静電吸着を活用するといった様々なアプローチが取られてきました。

今回KAISTらのグループによって提案された人の手の平構造に着想をえた人工皮膚構造はこのような操作に対する一つの有力なアプローチになるかもしれません。

生体の手の平は下の図1のように最表面、内部の脂質部位、その下層にある筋肉と異なる剛性のソフトマテリアルが層状の構造をしています。

柔らかい素材で様々な物質を把持する時には材料自体の変形が問題となりますが、生体の手の平のレイヤー構造は応力に対して適切な弾性変化と、そのセンシング機能により安定した把持を実現していると考えられています。

図1 生体の皮膚構造(上左)とその剛性特性(上右)
生体皮膚を模倣した人工皮膚の構造(下左)とその剛性特性(下右)
([1]のFigure 1.より引用)

本研究では歪みや変形に対して多孔質状のLatexを中間層に配置することで圧縮と伸長に対して従来、本分野でよく用いられるシリコーンポリマーに対してよりフラットな変形応力特性を実現しています。

本研究ではこの構造により作成したロボットアームの挙動を把持した物体に加えたGrasp Forceと把持の安定性を数値化したStability Indexの2つの指標で評価しています。

また実験とFEMの解析により、物体を握りアームが変形した時に把持領域の端部に生じるWrinkleやBucklingが今回の構造を模倣することで小さく抑えられているといった挙動を確認し、提案手法が把持特性を向上させている理由などについても考察されています。

本研究はAdvanced Functional Materialsに掲載されました。

参考文献

[1]Heo, S. H., Kim, C., Kim, T. S., & Park, H. S. (2020). Human‐Palm‐Inspired Artificial Skin Material Enhances Operational Functionality of Hand Manipulation. Advanced Functional Materials, 2002360.

URL

https://onlinelibrary.wiley.com/doi/abs/10.1002/adfm.202002360

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