HCI系のトップカンファレンス CHI2020で香りによって温冷感を感じさせるTemperature Illusionの技術が発表され、Best Paperを受賞しました。
ゴーグルなどのVR機器は配線などから解放されたUn-tetheredな条件での使用が求められています。その中で映像や音に続いて特に、注目されているのが触覚の領域です。
触覚のうち形状の表出についてはAurorでも下の事例などで紹介しています。
しかし、触感の中でも温冷感は実現することが難しい課題でした。エアコンなどは大きな電力を使うと共に、切り替えにも時間がかかります。一つ有力な方法としてはペルチェ素子の活用などが考えられますが、こちらも大きな電力を消費します。
本研究の著者Jas Brooksらによりますと、VRゴーグルの皮膚と設置している部分に複数のペルチェ素子10個を配置し、−3度の環境を作るには、10分間維持するだけでもスマートフォンの充電の1.5倍程度の電力を消費してしまうそうです。
このような課題に対して、彼らは化学物質を使った温冷感の表現を試みました。彼らは化学物質を局所的に噴射するデバイスを開発しました。
1mLのバイアル瓶の中に閉じ込められた化学物質(香料)がポンプによりコンテンツによって噴出されます。光量が鼻腔内の嗅覚受容体に触れることで、人は温冷感を錯覚するという仕組みです。
熱い感覚にはcapsaicin, 冷たい感覚にはeucayptolという物質をそれぞれ使用しています。本研究ではAnova分析などを行い香料が温冷感に与える効果を評価したり、デバイスの消費電力や体感のライフタイムを伸ばすための工夫などについても述べられています。
デバイス自体はさらに小さくする余地がありそうなので将来的にVRゴーグルなどにこのような機能が組み込まれたらますます没入感をましたユニークな体験ができるようになるかもしれないですね。
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[1] Brooks, J., Nagels, S., & Lopes, P. (2020, April). Trigeminal-based Temperature Illusions. In Proceedings of the 2020 CHI Conference on Human Factors in Computing Systems (pp. 1-12).ISO 690URL
・https://dl.acm.org/doi/10.1145/3313831.3376806