家庭用プリンターでウェアラブルデバイスが作れるDIY時代の到来

Soft Inkjet Circuits: Rapid Multi-Material Fabrication of Soft Circuits

2019年にNew Orleansで開催されたACM Symposium on User Interface Software and Technology(UIST)のBest paper awardに輝いた論文です。

ソフトインタラクティブデバイスの人気が高まっているにもかかわらず、その製造は複雑で時間がかかります。 従来のデスクトッププリンター、つまり家庭に広く普及しているインクジェットプリンターを使用して、ソフト回路を製造できるプロセスを提案しています。 伸縮性、超薄型、高解像度で、プロトタイピングに使用される多種多様な材料と統合された回路のインクジェット印刷をサポートしてくれる強力なツールです。家庭でのプロトタイピングツールとして、比較的安価なコストで新しいインタラクションを提案できる、唯一のツールかもしれません。

論文では、導電性および導電性を含むマルチマテリアルデバイスを実現するために、家庭用のインクジェットプリンタでマルチインク機能印刷を導入しています。インクを分離し、インクと基材と回路の弾力性との互換性を高めるためのDIY技術を紹介しており、タトゥーペーパー、テキスタイル、熱可塑性樹脂など、幅広い素材に回路を形成できます。伸縮性のあるデバイス、電子テキスタイル、ボディベースのインターフェイス、および再形成可能なインターフェイスを実現するための用途が広いことを示しています。

アプリケーション事例だけでなく、使用するインクのクライテリアや、実際プリントする紙の種類を振り、銀インクとPEDOT:PSS(チオフェン系導電性高分子)を塗った際のシート抵抗値の差分を観測していたり、断面SEMを確認するなどの必要なデータ取得も行なっているため、良い情報がまとまっていると思います。

本論文で提案しているアプローチは、いずれパーソナライズされたインターフェイス、ウェアラブル、インタラクティブなタトゥーを印刷するというビジョンを目指したものと言えます。

[1] : Khan, A., Roo, J. S., Kraus, T., & Steimle, J. (2019, October). Soft Inkjet Circuits: Rapid Multi-Material Fabrication of Soft Circuits Using a Commodity Inkjet Printer. In Proceedings of the 32nd Annual ACM Symposium on User Interface Software and Technology (pp. 341-354). ACM.

URL : https://dl.acm.org/citation.cfm?id=3347892