流体圧力を用いて作製したピストンアーキテクチャ

ピストンは、流体力学的エネルギー変換に使用されるユビキタスデバイスです。しかし、何世紀にもわたる開発にもかかわらず、従来の剛性ピストンによって生成される力と運動は、その設計によって制限されています。柔軟な材料と構造の使用は、従来にない特徴を備えたピストンの設計への扉を開きます。本論文では、柔軟な膜材料と圧縮可能な剛性構造の組み合わせを利用したピストンのアーキテクチャが提案されています。

実験結果は、従来のピストンと比較して、テンションピストンの概念が実質的に大きな力(3倍以上)、高出力、高エネルギー効率(低圧力で40%以上の改善)を生成できることを示しています。同時に論文中では、柔軟で剛性の高いハイブリッドピストンアーキテクチャは、従来のピストンよりも大幅に高い出力とエネルギー効率で性能を発揮できることを実証しており、潜在的な用途の非常に幅広い分野があることを示唆しています。

ただ利点だけでなく、文中では弱点も語られています。流体圧力によって逆駆動することはできないこと、高圧および高温の用途には理想的ではないということです。これらの重要な問題に対処して、今後の作業でテンションピストンの有用性を拡大していくことを結論としています。

[1] Li, S., Vogt, D. M., Bartlett, N. W., Rus, D., & Wood, R. J. (2019). Tension Pistons: Amplifying Piston Force Using Fluid‐Induced Tension in Flexible Materials. Advanced Functional Materials, 1901419.

論文URL:https://onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.1002/adfm.201901419

双方向に収縮する糸状のラインアクチュエータの開発とインタラクション

ModiFiber: Two-Way Morphing Soft Thread Actuators for Tangible Interaction

本研究は、2019年度のヒューマンコンピューターインタラクション(HCI)研究における最重要国際会議であるCHI会議(the SIGCHI Conference on Human Factors in Computing Systems)で発表された内容です。

研究対象である細いラインアクチュエータは、ファブリック、ペーパーアート、ソフトロボット工学など、さまざまなヒューマンコンピューターインタラクション(HCI)で広く研究されています。
本論文では、新規でありながらシンプルなラインベースのアクチュエータを紹介しています。
著者らが提案しているModiFiberは、シリコンコーティングを施したツイストコイル型のナイロンスレッドアクチュエータです。この複合アクチュエータは、熱または電流によって双方向に可逆収縮またはねじれ動作を示します。柔らかく、柔軟で、安全に操作でき、簡単に織ったり縫い付けられたりするため、HCIの目的のための組み込みラインベースのアクチュエータとして大きな可能性を秘めている、と主張しています。

論文中では、いくつかのアプリケーションを紹介しており、インタラクティブなウェアラブル、玩具、ロボットなど、アクチュエータが適応できる潜在的な適用性を実証しています。
従来の繊維の製造プロセスで使用可能か検証までしたかどうかは不明ですが、肌に触れる部分が柔軟なポリマーであれば、人体に密着するデバイスへの適用も遠くないかもしれません。

[1] : Forman, J., Tabb, T., Do, Y., Yeh, M. H., Galvin, A., & Yao, L. (2019, April). ModiFiber: Two-Way Morphing Soft Thread Actuators for Tangible Interaction. In Proceedings of the 2019 CHI Conference on Human Factors in Computing Systems (p. 660). ACM.

URL : https://dl.acm.org/citation.cfm?id=3300890&dl=ACM&coll=DL

Diversityなニーズを持つユーザーとの共作ペルソナが体験の可能性を拡張してくれる

Co-Created Personas: Engaging and Empowering Users with Diverse Needs Within the Design Process

ペルソナは、事業開発や設計におけるユーザーのターゲティング手法として、どういう使用方法をするか、を事前に想定するための強力なツールです。
現在はマーケティングの分野で非常に多く使用され、どういうユーザーが自社のサービスを使用するか、といった事業開発や事業推進の場面でも非常に多く見かけます。

この論文では、パーキンソン病、認知症、または失語症の人との共作ペルソナを使用して調査した3つの研究を報告しています。共同設計におけるセッションでの観測データを収集、分析したところ、調査結果では、共同作成されたペルソナが、多様なニーズを持つユーザーを奨励することを明らかにした、と報告しています。このペルソナを作るという共同設計プロセス内での共感、共感が促進され、記憶に残る結果も得られているようです。
論文中にもあるように、視覚的な小道具を通してコミュニケーションを簡単にし、デザインをより効果的に批判できる方法なども発見するなど、多様なユーザーグループを設計プロセスに関与させることが、ユーザー体験を更に拡張する可能性をもたらすと報告しています。

また、本論文は2019年度のCHI会議で報告されています。

[1] : Neate, T., Bourazeri, A., Roper, A., Stumpf, S., & Wilson, S. (2019, April). Co-Created Personas: Engaging and Empowering Users with Diverse Needs Within the Design Process. In Proceedings of the 2019 CHI Conference on Human Factors in Computing Systems (p. 650). ACM.

URL : https://dl.acm.org/citation.cfm?id=3300880

柔らかいマテリアルを機械編みする方法

Digital Fabrication of Soft Actuated Objects by Machine Knitting

ソフトロボット工学や形状変化インターフェースへの最近の関心により、ソフトで作動可能な材料のデジタル製造の需要が高まっています。この研究の多くは、エラストマーまたは非伸縮性の空気袋に焦点を当てています。計算制御された機械編みは、通気性、軽量、触り心地の非常に異なる特性を持つ柔らかい織物オブジェクトを迅速に生成できる製造技術を提供します。これらの機械は、衣類の大量生産向けに十分に最適化されていますが、CNC機械加工(Computer Numerical Control machining)や3D印刷などの他のデジタル製造技術と比較すると、汎用製造装置としてはあまり注目されていません。
今回の研究では、作動するソフトオブジェクトの作成に機械編みを使用するという、新しい方法を検討しています。ただし、今回論文中で提案されている方法の編み方は、材料の特性に関連するいくつかの制限があるようで、その部分についても考察がされています。

テキスタイルは、特に身体や家具などに非常に多く使用されている馴染みが深い物であり、人間のための材料の重要なカテゴリです。
コンピューター制御の編み物は、さまざまな入力素材から柔らかいオブジェクトを生成できます。本論文では、編みプロセスにアクチュエーションを直接埋め込む方法を示しており、著者らも同じカテゴリの研究が促進することを願っている、と締めくくられています。

[1] : Albaugh, L., Hudson, S., & Yao, L. (2019, April). Digital Fabrication of Soft Actuated Objects by Machine Knitting. In Proceedings of the 2019 CHI Conference on Human Factors in Computing Systems (p. 184). ACM.

URL : https://dl.acm.org/citation.cfm?id=3290605.3300414

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