3Dプリンターでテキスタイルの設計と織りを可能にする技術

3D Printed Fabric: Techniques for Design and 3D Weaving Programmable Textiles

本論文は2019年度のヒューマンコンピュータインターフェースに関する国際会議であるACM Symposium on User Interface Software and Technology(通称UIST)で報告された内容です。

本論文では、3Dプリンタを用いて、テキスタイルを製造するための技術を紹介しています。
熱溶解方式(FDM)3Dプリンターを使用し、プリントヘッダーの動きを制御することにより、交互に支柱の列全体に糸を張った繊維を織ります。 両側の柱を支えて強化する繊維の構造により、3Dプリンターは、繊維が織られている間、直立した状態で薄いシートの布を印刷できます。 さらに、この手法により、ユーザーはパターンを設計する際にさまざまな色または特性を持つ材料を使用し、導電性フィラメントなどの既製材料を使用して、インタラクティブオブジェクトをプロトタイプ化できる、と報告しています。

ただ、課題も多く材料の制約や繊維を折る方向によっては破損してしまうなどが挙げられていますが、今後の3Dプリンタにおけるヘッダーの先端径の微細化などの技術進化によって、さらに細かいテキスタイルを織れる可能性も示唆しています。

[1] : Takahashi, H., & Kim, J. (2019, October). 3D Printed Fabric: Techniques for Design and 3D Weaving Programmable Textiles. In Proceedings of the 32nd Annual ACM Symposium on User Interface Software and Technology (pp. 43-51). ACM.

URL : https://dl.acm.org/citation.cfm?id=3347896

MITらが開発した新しいボタン型インターフェース

SensorSnaps: Integrating Wireless Sensor Nodes into Fabric Snap Fasteners

本論文は2019年度のヒューマンコンピュータインターフェースに関する国際会議であるACM Symposium on User Interface Software and Technology(通称UIST)で報告された内容です。

現在テキスタイルや服、糸などに電子機器を追加する研究が盛んに行われています。ただ課題も多く、特にテキスタイルに電子機器を追加するには時間がかかり、専門知識が必要です。
本論文では、SensorSnapsというボタン部分などに簡単につけられるデバイスを提案しています。 SensorSnapsは、センシング機能を使用して衣服のあらゆる場所を迅速かつ直感的に拡張でき、なおかつ市販のスナップファスナーに安全に取り付けたり取り外したりできる、と主張しています。
原理は簡単で、デバイスにタップおよび回転ジェスチャを検出するために9軸IMU(3軸加速度 + 3軸角速度 + 3軸方位)センサを導入し、身体の動きを追跡すると同時にマイコンとBluetooth送信機もついています。
彼らの検証では、消費電力を最適化して、スタンバイモードで45分間、最大4時間連続して動作することを確認したそうです。

論文中にも提唱されていますが、著者らが想定するアプリケーションは、日常生活における主なユーザーインターフェースとなることで、音楽再生などを想定しているそうです。
ただし、バッテリーの寿命が短いことやバッテリーの充電に手間がかかること、コストが想定より少し高めであること(論文中に額は出ています)、衣服のデザイン性が損なわれることとなどが挙げれれますが、大規模に生産し、小型化が進んでいけば、高度なセンシングおよび通信機能を提供する新しいテキスタイルの道を開いてくれるかもしれません。

[1] : Dementyev, A., Vega Gálvez, T., & Olwal, A. (2019, October). SensorSnaps: Integrating Wireless Sensor Nodes into Fabric Snap Fasteners for Textile Interfaces. In Proceedings of the 32nd Annual ACM Symposium on User Interface Software and Technology (pp. 17-28). ACM.

URL : https://dl.acm.org/citation.cfm?id=3347913

ソフトロボットグリッパーの開発が海洋生物の生態系研究を加速させる

Soft Robotic Gripper for Jellyfish [1]

本論文は、Harvard大学のWyss InstituteとJohn A.Paulson School of Engineering and Applied Science(通称SEAS)らを要する研究者チームが発表した、海洋生物を掴むことができるソフトロボットに関する内容です。

今回報告された論文は、ゼラチン状の海洋生物の繊細なサンプルをつかむことができる、非常に柔らかいソフトロボットアクチュエータを紹介しています。
最先端のソフトロボットマニピュレーターは、深海でサンゴやナマコなどを優しくつかむことを実証していますが、より壊れやすいソフトボディの生物、例えばクラゲなどを掴むことはできていませんでした。ご存知のように、クラゲの体はゼラチン状の海洋生物であり、非常に繊細な刺胞動物の一種です。

今回、設計パラメーターの調査と個々のアクチュエーターの検証により、研究チームによって開発されたナノファイバー強化ソフトアクチュエーターは、十分に低い接触圧力を適用し、クラゲ種への害を最小限に抑えることを確認しています。
論文中に記載があるように、プロトタイプグリッパーを使用して、クラゲのサンプリングを行っています。

クラゲのような、より繊細な海洋生物を掴めるグリッパーが開発されたことで、こういった生物の活動習慣にストレスを与えることなく観察することができるようになることが期待されています。
深海生物や海洋生物の生態学的および遺伝的特徴を研究するために使用される評価技術が進化する可能性を示唆しています。

[1] : Sinatra, N. R., Teeple, C. B., Vogt, D. M., Parker, K. K., Gruber, D. F., & Wood, R. J. (2019). Ultragentle manipulation of delicate structures using a soft robotic gripper. Science Robotics4(33).

URL : https://robotics.sciencemag.org/content/4/33/eaax5425?rss=1

3Dプリンタで製作したソフトロボット向けの歪み圧力検出センサ

3D printed resistive soft sensors

本研究は、2018年にSoft Roboticsの国際会議IEEE RoboSoftに寄稿されたものです。

研究背景となるソフトロボットにおいて、そのセンサー設計は重要な設計パラメーター(ジオメトリ、材料など)が幅広く、そのセンサー特性を定義する事自体が非常に難しい問題です。
本研究では、市販の3Dプリンターを使用して、ソフトロボット本体と共同製作できるセンサーの設計を目指した研究であり、歪みや圧力などのさまざまなモダリティを検知できる、ソフトな3Dプリント抵抗センサーを試作しています。センサー自体は、CADソフトウェアを使用して簡単にカスタマイズでき、カスタムの複雑な3Dジオメトリに埋め込むこともできます。
論文内では、抵抗性ソフトセンサーの設計と製造へのアプローチを説明した上で、線形、平面、および3Dセンサーの特性評価を報告しています。センサーは、プリンターが紫外線で硬化する非導電性および導電性の市販のフォトポリマーの層で構成されており、線形および多層のソフトセンサーを印刷し、非平面のハート型および脳型のセンサーをヒューマノイド形状に埋め込むことにより、この方法の機能を実証しています。

論文中の結論部分に記載もありますが、ワイヤーと導電性ポリマー間でプロトタイプならではの抵抗値ばらつきが観測されたり、寄生容量によるノイズも存在するようですが、こういったソフトロボットの研究は非常に重要です。
3Dプリンター自体の進化によって、複数マテリアルや導電性ポリマーの印刷が普及するようになれば、複数のセンサーをソフトロボットに直接つなぐことができるようになる事も容易に想像できます。ソフトロボット開発に付随する分野は、さらなる研究発展が望める分野だと思います。

[1] : Shih, B., Mayeda, J., Huo, Z., Christianson, C., & Tolley, M. T. (2018, April). 3D printed resistive soft sensors. In 2018 IEEE International Conference on Soft Robotics (RoboSoft) (pp. 152-157). IEEE.

URL : https://ieeexplore.ieee.org/document/8404912

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