水滴から発電する液滴ベースのデバイスが開発され、その成果がNatureに寄稿されました

A droplet-based electricity generator with high instantaneous power density [1]
(Supplementary informationより引用)

雨滴、川や海の波、潮などの形で水からエネルギーを収穫するために、多大な努力が払われてきましたが、高密度の発電を達成することは困難です。従来の水力発電では、主に重くてかさばる電磁発電機が使用され、低給水では効率が悪くなります。これに代わる水滴/固体ベースの摩擦電気ナノ発電機は、電荷生成と移動の特性に見られるように、界面効果によって課せられる制限により、固液もしくは液体同士の界面において、1平方メートルあたり1ワット未満のピーク電力密度を生成しました。

香港大学らに所属する研究チームが、インジウムスズ酸化物基板上のポリテトラフルオロエチレンフィルムとアルミニウム電極を含むアーキテクチャを使用して、衝突する水滴からエネルギーを収集するデバイスを開発し、その研究成果をNatureに寄稿しています。

原理的にはデバイスに衝突した水滴が広がると、元々切断されていたコンポーネントが閉ループの電気システムにブリッジされ、従来の界面効果がバルク効果に変換されるため、界面効果によって制限される同等のデバイスよりも瞬時に電力密度が数桁向上することがわかったと報告しています。

論文中に記載がありますが、今回発表している液滴ベースの発電機(DEG)は、フッ素化材料に水滴が連続的に衝突すると、その表面に高い電荷密度が誘導されることを示す最近の研究に基づいており、DEGのデバイスは、酸化インジウムスズ(ITO)でコーティングされたガラス基板上に、アルミニウムの小片を堆積したポリテトラフルオロエチレン(PTFE)のドロップキャスティングを使用して製造されているそうです。

[1] : Xu, W., Zheng, H., Liu, Y. et al. A droplet-based electricity generator with high instantaneous power density. Nature (2020).

URL : https://www.nature.com/articles/s41586-020-1985-6#Sec14

グラフェンと酸化無機化合物を使用した伸縮可能なマイクロスーパーキャパシタ

Figure 1. レーザー誘起プロセスから始まる製造概略プロセスと、実際のキャパシタ画像 [1]
(論文[1]のFigure 1より引用)

優れた伸縮性を備えたマイクロスーパーキャパシター(MSC)の構築は、ウェアラブルエレクトロニクスにとって非常に重要な要素です。肌に貼るデバイスも多く開発されているため、伸縮性は必須な要素ですし、同様に生体との親和性も重要な因子になっています。

華南理工大学の研究チームが、レーザー誘起グラフェン/ NiO / Co3O4(NiO / Co3O4 / LIG)をポリイミドフィルム上で合成し、生分解性水系ポリウレタン基板に転写することで伸縮性MSCを製造することに成功し、その研究成果をAdvanced Materials Technologiesに寄稿しています。
実験で製造した伸縮性キャパシタは、2.4 mF cm-2の優れた面静電容量、50%の歪みで77.1%の高い静電容量保持率、1000回の伸縮サイクル後の19.8%未満の静電容量劣化を示した、と論文中で報告しています。

これらの望ましい特性が達成できている理由として、主に、NiO / Co3O4 / LIGの勾配構造、ハイブリッドNiO / Co3O4ナノ粒子の相乗効果、および電極とWPU間の強力な界面接着に起因するそうです。
伸縮性MSCを使用してマイクロセンサーに電力を供給し、TENGと呼ばれる摩擦電気ナノ発電機でそれらを組み立て、皮膚との機械的接触から電力を生成することによって、その効果を論文中で証明しています。
これにより、伸縮性MSCはウェアラブルエレクトロニクスの持続可能な駆動源として有望だと締めくくっています。

[1] : Wang, W., Lu, L., Xie, Y., Yuan, W., Wan, Z., Tang, Y., & Teh, K. S. A Highly Stretchable Microsupercapacitor Using Laser‐Induced Graphene/NiO/Co3O4 Electrodes on a Biodegradable Waterborne Polyurethane Substrate. Advanced Materials Technologies, 1900903.

URL : https://onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.1002/admt.201900903

生体模倣のための形状を設計可能な3Dプリントされた磁性オブジェクト

生体模倣(Biomimetics)のシステムにおいて、形状の設計は重要な技術要素とされています。今回Composits Science and Technologyに掲載された論文はMagnet-active soft materials (MSASMs)と呼ばれる磁界に対して応答・変形する柔らかな材料の動きをProgrammableに設計する手法を提案しています。

MASMsとしては過去に紹介した下の論文なども記憶に新しいです。

今回の手法はMASMsに対して、素早く実装でき、繰り返し動作にも優れる方法として下の図1のように磁性コンポーネントを配置するアプローチを取っています。

図1 MASMsの動作設計プロセスの概要 ([1]のFig. 1. より引用)

製造された物質には磁性体がある特定の向きで配置され、磁界に応じて配向しようとする力で変形します。ボディはシリコーンエラストマーで覆われており、磁界を取り除くと材料の復元力により元の形状に戻ります。

変形の関係はCOMSOLによりシミュレーションされており設計の段階で磁界に対する変形の様子を把握することができます。

論文中では蛇やヒトデの動きの模倣や、歩行・泳ぎ・掴むといった動作を本手法により実現できることを示しています。歩行タイプのロボットでは数千回の動作でも目立った劣化が見られていないようでした。

シミュレーション、ファブリケーション 、マテリアルが接続されたProgrammable Matterの研究は今後も増えていきそうですね。

参考URL;

参考文献:

[1]Qi, S., Guo, H., Fu, J., Xie, Y., Zhu, M., & Yu, M. (2020). 3D printed shape-programmable magneto-active soft matter for biomimetic applications. Composites Science and Technology, 188(December), 107973. https://doi.org/10.1016/j.compscitech.2019.107973

液体金属ナノ粒子を用いた伸縮可能なエナジーハーベスター

Aurorでも度々取り上げているエナジーハーベスターは素子はウェアラブルやIoTなどの分野などのエネルギー供給問題を解決する手法として非常に期待されています。

今回の記事では伸縮可能なエナジーハーベスターとそれを用いたインタラクティブなシステムをご紹介します。

Chinese Academy of Sciences らのチームによって提案された手法は液体金属ナノ粒子(LM-NPs)を用いることでモーションエナジーハーベスターに伸縮性を持たせています。

下の図の様にエタノール中で液体金属(gallium, indium, tin)を超音波攪拌することで液体金属のナノ粒子上に分解し、それらをシリコーンエラストマーとさらに混合し、硬化させることで安定化させています。

図1 LM-NPsの製造プロセス([1]のFigure 1.より引用)

この様に作成されたLM-NPsインクをアクリルエラストマー上にパターニング塗布し、表面にさらにPDMS層を設けてCopper Tapeと対向させて配置することでTENG(triboelectric nanogenerators )型のエナジーハーベスターが形成されます。

TENGについてはこちらも合わせてご参照ください。

本研究ではLM-NPsのTENGをアレイ上に配置し、各セルに加わった圧力による起電力を読み取りインタフェース上に表示するといったデモも行なっています。

図2 LM-NPsを用いた3*3 Trigger キーボードの様子([1] Figure 5.より引用)

印刷プロセスなどと組み合わさっていくことで、安価に実装できる様になっていくと用途が広がるかもしれないですね。

参考URL

https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/adfm.201909652

参考文献

[1]Yang, Y., Han, J., Huang, J., Sun, J., Wang, Z. L., & Seo, S. (2020). Stretchable Energy-Harvesting Tactile Interactive Interface with Liquid-Metal-Nanoparticle-Based Electrodes, 1909652, 1–10. https://doi.org/10.1002/adfm.201909652

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