ルームスケール規模に形状変化できるビルディングブロック:LiftTiles

LiftTiles: Constructive Building Blocks for Room-scale Shape-changing Interfaces [1]

コロラド大の鈴木遼氏らの研究チームが、大きなスケールでのアクチュエータブロックを開発し、それらを利用したシナリオを紹介した論文が、2020年のTEI会議にて発表されました。

大規模な形状変更可能なユーザーインターフェースは作成するにはかなりの時間、コスト、スペース、労力が必要ですが、実現できれば適用できるアプリケーションやシナリオは多岐にわたります。ただ、小規模の人数のチームでは、その実現性の確認のためのプロトタイピングが難しい、という課題がありました。

本論文では、モジュラーインフレータブルアクチュエータを、部屋規模の形状変化インターフェイスのプロトタイピングのビルディングブロックとして紹介しています。
各アクチュエータは、空気圧によって作動および制御され、高さを15cmから150cmに変更できるそうです。
また、各ユニットは低コスト、軽量、コンパクトでありながら、動画の中でもあるように、人が乗っても動作するぐらい堅牢で、部屋規模の形状変換のプロトタイピングに最適だと報告しています。

こういったルームスケールに適用可能な、高度に拡張可能なアクチュエータの設計と実装が可能になれば、部屋や建築物のプロトタイピングが容易になるメリットがありそうです。

[1] : Suzuki, R., Nakayama, R., Liu, D., Kakehi, Y., Gross, M. D., & Leithinger, D. (2020). LiftTiles: Constructive Building Blocks for Prototyping Room-scale Shape-changing Interfaces. arXiv preprint arXiv:2001.02382.

URL : https://dl.acm.org/doi/abs/10.1145/3374920.3374941

香港理工大学らが開発した収差のない非球面面内可変液体レンズ

Figure 1. 縦球面収差(LSA)の制御の動作原理と構造概要図 [1]
(論文[1]のFigure 1より引用)

収差は固定焦点レンズの長年の問題であり、通常、収差を補正するには複雑なレンズセットが必要です。調整可能なレンズの場合はさらに難しくなります。

香港理工大学らの研究チームは、焦点距離の調整中に球面収差を補正できる面内オプトフルイディクスレンズのオリジナルデザインを報告し、Lab on a chipにその研究成果を報告しています。
鍵となるアイデアは、誘電泳動効果により電極ストリップの2つのアレイを使用して、2つの空気/液体界面を対称的に制御することだそうです。

各ストリップは連携してレンズインターフェースの全体的な形状と焦点距離を定義しますが、各ストリップはインターフェースの局所的な曲率を調整して、近軸および周辺アレイを同じポイントにフォーカスします。
シリコーン油滴を使用した実験では、焦点距離が500〜1400μmを超えて調整され、球面レンズのLSA(85μm)のわずか1/24である約3.5μmの縦球面収差(LSA)が得られたと報告しています。
また、印加電圧を微調整することにより、LSAを排除し、収差のない調整可能なレンズを実現できると報告しており、1つの面内液体レンズ内の収差を補正するために局所曲率調整が使用されるのは初めてだと主張しています。

[1] : Chen, Q., Tong, X., Zhu, Y., Tsoi, C. C., Jia, Y., Li, Z., & Zhang, X. (2020). Aberration-free aspherical tunable liquid lenses by regulating local curvatures. Lab on a Chip.

URL : https://pubs.rsc.org/-/content/articlelanding/2020/lc/c9lc01217f#!divAbstract

粘性流を利用した流体ソフトロボットの動作を簡素化する手法

Simplifying the actuation of fluidic soft robots. (a) Each ...
Figure 1. 流体ロボットの動作簡易図、(b)が本論文で提案している構造図 [1]
(論文[1]のFigure 1より引用)

加圧流体を動力とするソフトロボットは、最近、宇宙探査、捜索救助システム、生体模倣、医療手術、リハビリテーションなど、さまざまな分野でさまざまな革新的なアプリケーションを可能にしました。ソフトロボットは多くの異なるタスクを実行できることが実証されていますが、通常、それらを構成するアクチュエータの独立した膨張が必要であるため、複数の入力ラインが別々の圧力供給に接続され、複雑な作動プロセスが発生することが課題です。

この制限を回避するために、ハーバード大学のWyss研究所らの研究チームが、流体のアクチュエータを細いチューブに接続して粘性流の影響を利用することにより、システムに作動シーケンスを組み込み、モデリングと最適化ツールを開発して最適なチューブ特性を特定し、単一の圧力入力で膨張させたときにさまざまな複雑なターゲット応答を実現できる流体ソフトロボットの逆設計を実現したと報告しています。この研究成果はSoft Roboticsに寄稿されています。

数値予測と実験結果の間に優れた一致が見られており、予測力とフレームワークの堅牢性を明確に示していると主張しています。本研究により、単一の入力を使用して複数の異なるタスクを実行できる幅広い流体作動のソフトロボットを設計するために適用できる可能性がある、と考えているそうです。

[1] : Vasios, N., Gross, A. J., Soifer, S., Overvelde, J. T., & Bertoldi, K. (2019). Harnessing viscous flow to simplify the actuation of fluidic soft robots. Soft robotics.

URL : https://www.liebertpub.com/doi/full/10.1089/soro.2018.0149

光誘導形状記憶機能を備えた3Dプリントできる再構成可能な液晶エラストマー

3D印刷可能で、高温条件でのUV(紫外光)の照射によりポリマーネットワークを再構成することで形状を記憶できる液晶エラストマー材料とそのファブリケーション 技術がAdvanced Materialsに掲載されています。

液晶エラストマー(LCE)はソフトロボットや光応答性のアクチュエータ材料などとして応用が期待されている材料です。液晶はnematicとisotropicという2つの相状態を転移温度によって遷移します。この状態は一般的には機械的による延伸と架橋によってもたらされています。(※)

(※磁場などによってもたらされているケースもあるようです。)

また1mm以上の厚みをもつバルクのLCEフィルムではhigh operating temperature direct ink writing(HOT-DIW)と呼ばれる3Dプリンタで射出しながら描画する手法によって同様の効果が得られることが知られています。

今回Harvard Universityらのチームによって提案された手法では、3D Printによって射出されたLCE材料の構造体を相転移温度以上でUVを照射し、その後室温で再度架橋させることでHOT-DIWによってもたらされていたnematicの構造を再構成しています(図1)。

図1 架橋構造を再構成するプロセス([1]のFigure1より引用)

このようにすることでLCEは特定の形状を記憶することができます。下の図2は、相転移温度以上でコーン状に変形する印刷物をUVを与えることでその構造を記録(その状態で架橋構造を形成)しています。

図2 架橋部位を再構成した3DプリントされたLCEの様子([1]Figure3から引用)

下の動画は本論文のSupportingに掲載されているものです。右側は相転移温度以上で安定したコーン状態で記録しているので、お湯につけていることで二つの形成物が同様の形状となります。

本手法では架橋構造を再構成することで温度に対してより安定かさせるだけでなく、際架橋する場所などをマスクなどによってコントロールすることもできるので、特定の箇所にのみ変形を起こさせるといった設計も可能となります。

素材とDigital Fabricationを組み合わせることでSelf-Foldingなどの設計の幅がますます広がりそうですね。

参考文献

[1] Davidson, E. C., Kotikian, A., Li, S., Aizenberg, J., & Lewis, J. A. (2020). 3D Printable and Reconfigurable Liquid Crystal Elastomers with Light‐Induced Shape Memory via Dynamic Bond Exchange. Advanced Materials32(1), 1905682.

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