本記事は、2018年に科学技術雑誌 Nature に掲載された論文を元に、その研究背景と論文内容、今後の展望を書いたものです。
冒頭の動画およびこの記事で紹介する論文では、非常に小さなソフトロボットを提案しています。
映像をみるとわかりますが、このソフトロボットは、実際に歩くだけでなく、転がる、ジャンプする、泳ぐことができます。これは、人体内部の驚くほど厳しい地形をナビゲートするのに役立つ、と主張しています。
一般に小さなロボットは、その筐体の小ささのおかげで、応用範囲が広く、細胞操作やバイオセンシングをはじめ、人体内、血液中などの輸送を考えると薬物伝達や低侵襲手術なども可能になる技術であり、現在開発が進められている、と言うのが背景になります。
本論文で提案しているロボットは、柔らかい活性物質で構成されており、磁気的に作動して、所望の時に形状が変化します。
ロボット設計と動作入力によって、マルチモーダルな移動を実現でき、異なる地形におけるプログラムされたボディ変形と剛体回転特性を同時に考慮しています。
特に磁気作動は、ほとんどの生物学的および合成材料に簡単かつ無害に浸透できるそうで、医療用途をはじめとしたさまざまな用途に適していると主張しています。同時に理論モデルの構築及び実証を行っており、異なる寸法のロボット間で行われた広範な実験的特性とそれらを比較しています。
一般に、波状の水泳運動を除き、実験データはモデルとよく一致するようで、これらの分析は、マルチモーダル移動を行う将来のミニチュアロボットのパフォーマンスを最適化するための有用な設計ガイドラインにもなります。
こういったソフトロボットに使用される材料と、筐体変形や駆動に使用するトランスデューサー、その動力源における研究が進むにつれ、医療やバイオセンシング領域の技術進歩はさらに進化するように思えます。
[1] : Hu, W., Lum, G. Z., Mastrangeli, M., & Sitti, M. (2018). Small-scale soft-bodied robot with multimodal locomotion. Nature, 554(7690), 81.URL : https://www.nature.com/articles/nature25443