3Dプリンターでガラスが作れる、と科学技術雑誌 Natureで2017年に紹介された論文を紹介します。
ガラスは、使用される最も重要な高性能材料の1つで、我々の日常生活に欠かせない物質です。特にその物性は非常に優れており、透過性、機械的、化学的および熱的耐性、ならびにその熱的および電気的絶縁特性により、我々の周りに溢れています。しかし、ガラス、特に石英ガラスなどの高純度ガラスは成形が難しいことで有名であり、高温の溶融および鋳造プロセス、危険な化学物質が必要です。これらの欠点により、ガラスは3次元印刷(3D印刷)などの最新の製造技術にアクセスできなくなりました。
ドイツのカールスルーエ工科大学の研究チームらが、数十マイクロメートルの解像度でステレオリソグラフィー3Dプリンターを使用して透明な溶融シリカガラスコンポーネントを作成するプロセスを発表しています。
このプロセスでは、3D印刷され、熱処理により高品質の溶融シリカガラスに変換される光硬化性シリカナノコンポジットを使用します。印刷された石英ガラスは、市販の石英ガラスの光学的透明性を備えた非多孔質で、数ナノメートルの粗さの滑らかな表面を持っています。金属塩をドーピングすることにより、色付きガラスを作成できます。この作業により、3Dプリンティング用の材料の選択肢が広がり、産業および学界の多くの用途で、溶融シリカガラスに任意のマクロおよび微細構造を作成できる、と主張しています。
論文中に細かい制作プロセスが書いてありますが、非常に微細なガラス構造を3Dプリンタを利用して作っているので、興味深いものとなっています。ただ、量産プロセスにはあまり向かないように思えますので、今後の技術進化に期待したいところです。
[1] Kotz, F., Arnold, K., Bauer, W., Schild, D., Keller, N., Sachsenheimer, K., … & Rapp, B. E. (2017). Three-dimensional printing of transparent fused silica glass. Nature, 544(7650), 337.URL : https://www.nature.com/articles/nature22061