有機半導体材料のナノ構造アレイに基づく電界効果トランジスタの開発

WG3と呼ばれる物質の製造プロセスと、2次元および3次元画像、接触角のデータ [1]
(論文[1]におけるFigure 1より引用)

南京郵電大学の研究チームが、ワイドバンドギャップ(WBG)分子有機半導体材料の絶縁および秩序化ナノ構造アレイに基づく有機電界効果トランジスタ(OFET)メモリデバイスの開発[2-(9-(4-(オクチルオキシ)フェニル)-9H-フルオレン-2-イル)チオフェン] 3(WG3)を発表しています。

WG3ナノ構造は、WG3 /トリメチロールプロパン(TMP)の混合溶液をスピンコーティングすることにより相分離から調製され、不揮発性OFETメモリデバイスの電荷蓄積素子として生成するそうです。
滑らかなWG3フィルムを備えたOFETメモリデバイスと比較して、WG3ナノ構造アレイに基づくデバイスは、メモリウィンドウの拡大(約45 V)、スイッチング速度の高速化(約1秒)、安定した保持能力(> 104秒)などのメモリパフォーマンスの大幅な改善を示したと報告しています。

WG3 NSsの形態の定量的研究により、強化されたメモリ性能は、WG3 NSsとペンタセン層の間の接触面積の増加によって引き起こされる電荷​​トラップ/電荷励起子消滅効率の改善に起因することが明らかになりました。チャージトラップサイトとしてWG3 NSsアレイを準備するためのこの多用途のソリューション処理アプローチにより、広範囲のWBG有機半導体材料に適用可能な高性能不揮発性OFETメモリデバイスの製造が可能になる、と主張しています。

[1] : Li, W., Guo, F., Ling, H., Liu, H., Yi, M., Zhang, P., … & Huang, W. (2018). Solution‐Processed Wide‐Bandgap Organic Semiconductor Nanostructures Arrays for Nonvolatile Organic Field‐Effect Transistor Memory. Small14(2), 1701437.

URL : https://onlinelibrary.wiley.com/doi/abs/10.1002/smll.201701437

ファブリックベースの新しいテキスタイルプラットフォームの提案

Celebrating 10 years of e-sewing with LilyPad [1]

組み込みコンピューティングプラットフォームと新しい材料(導電性繊維など)の出現により、ファブリックや電子工芸の景観を再考することが可能になりました。これらの景観は、電子/計算テキスタイルやエテキスタイルの創造的な範囲で拡張されます。

コロラド大ボルダー校の研究チームは、初心者が独自のソフトウェアラブルやその他のテキスタイルアーティファクトを設計および構築できるファブリックベースの構築キットであるLilyPad Arduinoについて提案し、その成果を2008年度の国際会議であるCHI会議(the SIGCHI Conference on Human Factors in Computing Systems)にて報告しています。

キットは、マイクロコントローラーと、ステッチ可能なパッケージの各種センサーとアクチュエーターで構成されており、導電性の糸で布地や互いに縫い付けて、e-テキスタイルを構築できると報告しています。

パーソナライズされた電子テキスタイルデザインの分野での将来の作業の可能性のある方向と、このLilyPadが生み出すテキスタイルをベースとしてソフトウェアプラットフォームの可能性について、論文では言及しています。

[1] : https://www.digikey.jp/ja/maker/projects/getting-started-with-lilypad/9b8886d969e149fb82e00f212be5737e

[2] : Buechley, L., Eisenberg, M., Catchen, J., & Crockett, A. (2008, April). The LilyPad Arduino: using computational textiles to investigate engagement, aesthetics, and diversity in computer science education. In Proceedings of the SIGCHI conference on Human factors in computing systems (pp. 423-432). ACM.

URL : https://dl.acm.org/citation.cfm?id=1357123

エラストマーを使用したソフトアクチュエータの自律制御用の双安定バルブ

Figure 1. 一定圧力の空気源を使用した自律型ソフトロボットの移動図
(論文[1]のFigure 6 (B)より引用)

空気圧および油圧アクチュエータは、制御のためにハードバルブに依存しています。
ホワイトサイズ氏が率いるハーバード大学の研究チームでは、空気の流れを制御するための機械的な「スイッチ」として機能する双安定膜を含む、柔らかいエラストマー製バルブについて発表し、その成果をScience Roboticsに寄稿しています。

構造的不安定性により、膜の2つの安定状態間を迅速に移行できます。膜のスナップアップ圧力は、スナップダウン圧力とは異なります。この圧力値は、膜の形状と材料を変更することで設計できるそうです。
バルブは、「開閉」状態のいずれかで電力を維持する必要がなく、双安定になるように設計でき、さらに圧力を加えなくてもどちらの状態でも維持できるとのことです。
フィードバック空気圧回路に組み込まれた場合、バルブは空気圧発振器として機能し、単一の定圧源からの空気を使用して周期的な動きを生成します。バルブは、グリッパーがボールを自律的につかんだり、定圧の空気源を使用してミミズのような自律的な移動を可能にすることをアプリケーション事例でも確認しています。

これらのバルブは、単純な成形を使用して製造されており、単純な制御機能と論理機能をソフトアクチュエータとロボットに直接統合する方法を提供する、と主張しています。

[1] : Rothemund, P., Ainla, A., Belding, L., Preston, D. J., Kurihara, S., Suo, Z., & Whitesides, G. M. (2018). A soft, bistable valve for autonomous control of soft actuators. Science Robotics3(16), eaar7986.

URL : https://gmwgroup.harvard.edu/publications/soft-bistable-valve-autonomous-control-soft-actuators

自宅で低コストで実装できる技術:紙アクチュエーターの開発

Printed Paper Actuator: A Low-cost Reversible Actuation and Sensing Method for Shape Changing Interfaces

本論文は、2018年度に行われたヒューマンコンピュータインタラクション(HCI)における国際会議であるthe SIGCHI Conference on Human Factors in Computing Systems(通称CHI)で報告された内容です。

本論文では、印刷された紙でできたアクチュエータを、低コスト、電気的な動作、および検知方法として使用することを提案しています。 紙でアクチュエータを制作可能という点においては、インタラクションにおける材料のライブラリを拡張する、簡単にアクセスできる技術という意味で非常に価値があります。二層曲げ作動、熱可塑性樹脂の形状記憶効果、導電性印刷フィラメントを介した電流駆動加熱など、3つの物理現象を統合することにより、アクチュエータを開発した、と報告しています。
熱溶解積層法(FDM)方式の3Dプリンターを用いて、コピー用紙に単層の導電性ポリ乳酸(PLA)を印刷するだけで制作可能であり、本論文では、製造プロセス、材料メカニズムなどについて説明し、その後に電子的なセンシングおよび制御方法について説明しています。

ヒューマンコンピュータインタラクション系ならではかもしれませんが、論文中では、様々なアプリケーション、特にロボティクス、インタラクティブアート、エンターテイメント、家庭環境の4つのコンテキストで調査しています。
動画中にもありますが、マイコンと組み合わせれば自由度の高いアクチュエータになるし、かつ紙というコストが安く実装できる部分にも着目すると、非常に良い取り組みだと思います。
ただRelated workに書かれているように、類似した研究も多いので、興味のある方は他のPaper-printed electronicsの論文についても、調査してみると良いかもしれません。

[1] Wang, G., Cheng, T., Do, Y., Yang, H., Tao, Y., Gu, J., … & Yao, L. (2018, April). Printed Paper Actuator: A Low-cost Reversible Actuation and Sensing Method for Shape Changing Interfaces. In Proceedings of the 2018 CHI Conference on Human Factors in Computing Systems (p. 569). ACM.

URL : https://dl.acm.org/citation.cfm?doid=3173574.3174143

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