触感と音も実現した3次元ディスプレイがNatureに掲載されました

SFの代表作の一つであるスターウォーズの世界で実現されているような3D映像を投影する手法がNatureに掲載されました[1]。

これまでも、薄いフィルムを超音波場により浮遊させてそこにプロジェクションする手法や、光源を回転させる手法、光学系を工夫して結像させる手法など、様々なアプローチで空中ディスプレイが検討されてきました。

今回掲載された空中ディスプレイはMultimodal Acoustic Trap Display (MATD)と呼ばれる手法が採用されています。

この手法では小さな粒子を256個の超音波スピーカーアレイをコントロールすることで空中に留め、その位置をコントロールしつつ、位置を補足しながら、そこに映像を投影しています。

また振動による触感フィードバックや音といった情報もコントロールすることでMulti-modalな表現が実現されています。

下のリンクからは過去の3次元ディスプレイの経緯についても触れられているので興味のある方はぜひご覧ください。

[1]Hirayama, R., Martinez Plasencia, D., Masuda, N., & Subramanian, S. (2019). A volumetric display for visual, tactile and audio presentation using acoustic trapping. Nature.

URL:

https://www.nature.com/articles/d41586-019-03454-y

https://www.nature.com/articles/s41586-019-1739-5

VR体験向けフォースフィードバック用の小型手持ちコントローラーの提案

Aero-plane: A Handheld Force-Feedback Device that Renders Weight Motion Illusion on a Virtual 2D Plane [1]

フォースフィードバックは、仮想現実(VR)の次のフロンティアであると言われています。
特に小型のポータブルデバイスやウェアラブルデバイスが求められていますが、重い物体を動かしたり、固有の質量特性を持つ物体と相互作用したりする場合など、慣性力のレンダリングに関しては、現在の非接地フォースフィードバックデバイスは、重量変化を現実的にシミュレートできる重量移動感覚を提供できていないのが現状だそうです。

KAIST(Korea Advanced Institute of Science and Technology:韓国科学技術院)の研究チームは、0.3秒以内に最大14Nの移動重量をレンダリングできる2つの小型ジェットプロペラに基づいた、フォースフィードバックコントローラであるAero-planeを紹介しています。
研究における2つのユーザー調査を通じて、デバイスの使用中に仮想平面上のさまざまなモーションパスを認識して正しく認識するユーザーの能力を特徴付け、2つのVRアプリケーション(平面上の転がるボール、異なる形状とサイズのキッチンツールの使用)で使用した場合のコントローラーのリアリズムと没入のレベルをテストしています。

想定アプリケーションでは、射撃訓練やフライトシュミレータ、魚釣りなどを想定しているようです。今後は特に音の軽減やレイテンシーなどの改善を検討しているそうです。

尚、本論文は2019年度のUIST会議にて報告・発表があったものです。

[1] : Je, S., Kim, M. J., Lee, W., Lee, B., Yang, X. D., Lopes, P., & Bianchi, A. (2019, October). Aero-plane: A Handheld Force-Feedback Device that Renders Weight Motion Illusion on a Virtual 2D Plane. In Proceedings of the 32nd Annual ACM Symposium on User Interface Software and Technology (pp. 763-775). ACM.

URL : https://dl.acm.org/citation.cfm?doid=3332165.3347926

UHFの無線RFIDを用いたバッテリーレスワイヤレスハードウェア設計システム

RFTouchPads: Batteryless and Wireless Modular Touch Sensor Pads Based on RFID [1]

国立台湾大学の研究チームが、2019年度に開催されたUIST会議にて、超高周波(UHF)無線周波数識別(RFID)技術に基づいた2次元(2D)タッチセンサーパッドのバッテリーレスおよびワイヤレスモジュラーハードウェア設計システムであるRFTouchPadsを紹介しています。

このシステムでは、複数のRFID ICチップがアンテナに並列に接続されており、各チップは、そのエンドポイントの1つだけをアンテナに接続します。したがって、モジュールは通常、動作するのに十分なエネルギーが得られないときにオフになります。
指がチップの別のエンドポイントに接続された回路トレースに触れると、指は接続されたチップをオンにするアンテナの一部として機能し、指のタッチ位置はチップのIDに従って決定されるそうです。

この原則に基づいて、StickerPadとTilePadの2つのハードウェア設計を提案しています。
StickerPadは、人体などの曲面上のアプリケーションに適した柔軟な3×3タッチセンサーパッドです。
TilePadはモジュラー3×3タッチセンシングパッドで、タイルによるモジュラー領域の拡張をサポートし、アンテナが折り畳まれているため、より柔軟な展開が可能です。この実装により、2Dタッチ入力の信頼性を、RFIDリーダーのリモートアンテナから2m離れた場所で検出できるそうです。

提案されたバッテリーレス、ワイヤレス、およびモジュール式のハードウェア設計により、さまざまなユビキタスコンピューティングアプリケーションできめ細かく、制約の少ない2Dタッチ入力が可能になる、と主張しています。

[1] : Hsieh, M. J., Guo, J. L., Lu, C. Y., Hsieh, H. W., Liang, R. H., & Chen, B. Y. (2019, October). RFTouchPads: batteryless and wireless modular touch sensor pads based on RFID. In Proceedings of the 32nd Annual ACM Symposium on User Interface Software and Technology (pp. 999-1011). ACM.

URL : https://dl.acm.org/citation.cfm?doid=3332165.3347910

柔らかいアクチュエータを搭載したマイクロロボット:RoboBee

RoboBee powered by soft muscles

Harvard John A. Paulson School of Engineering and Applied Science(SEAS)とWyss Institute for Biologically Inspired Engineeringの研究者は、柔らかい人工筋肉を搭載した弾力性のあるRoboBeeを開発したと発表しました。
Robobeeは壁に衝突したり、床に落ちたり、損傷を受けずに他のRoboBeesと衝突したりできるマイクロロボットであり、制御された飛行を達成するためのソフトアクチュエータを搭載した最初のロボットと主張しています。

本論文中では、既存のソフトアクチュエーターにおいては、リフトオフを達成するのに十分な電力密度をまだ実現できておらず、課題があるとし、今回発表したRoboBeeはは、多層誘電エラストマーアクチュエータによって駆動しているそうです。同時に、これらのロボットは、周囲の障害物との衝突を感知することができ、損傷を引き起こすことなく、壁や互いに衝突するとコメントしています。

「マイクロロボットの分野では、非常に弾力性が高いため、移動ロボットをソフトアクチュエータから作成するという大きな推進力がありました」と、SEASの元大学院生でポスドクの研究員で論文の筆者はコメントしており、さらに 「しかし、現場の多くの人々は、これらのアクチュエータの出力密度が十分に高くなく、制御が難しいことで悪名高いため、飛行ロボットに使用できることに懐疑的です。当社のアクチュエータは、ホバリング飛行を達成するのに十分な高出力密度と制御性を備えています。」ともコメントしています。

次世代のアジャイルソフトロボットを開発する可能性を示しており、ますます軽いソフトロボットの実現が可能になる世界観を示してくれています。本論文はNatureに掲載されております。

[1] : Chen, Y., Zhao, H., Mao, J., Chirarattananon, P., Helbling, E. F., Hyun, N. S. P., … & Wood, R. J. (2019). Controlled flight of a microrobot powered by soft artificial muscles. Nature, 1-6.

URL : https://www.nature.com/articles/s41586-019-1737-7

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