3次元螺旋構造の導電ファイバーによる洗濯できるウェアラブル

非常に安価でありながら洗濯にも耐えられるウェアラブル用の伸縮導電ファイバーが提案されAdvanced Materialsに掲載されました[1]。

ウェアラブルやソフトロボットなどの領域に置いて伸縮性を有する導電のファイバーは重要なコンポーネントです。大きく分けて素材そのものを伸縮性にするアプローチと硬い素材の構造を工夫することで柔らかくするといったアプローチが取られています。

今回Wuyi Universityらによって提案された手法はファイバーを三次元の螺旋構造にすることで伸縮性を実現しています。図1の様に銅のファイバと伸縮性のPUファイバーを用意しています。ポリウレタンのみ伸長させた状態で銅ファイバーと接続し、コーティングしてから応力を解放することで自然と3次元の螺旋構造を形成するというアプローチを取っています。

図1. 螺旋構造導電ファイバーの作成プロセス([1]のFigure 1. より引用)

論文中では初期のテンションに対する構成された螺旋の径や角度、そして物性などを取得しています。素材自体を伸縮性にするアプローチと比べて、この手法の場合は螺旋の構造が伸びきるまではほぼ金属の初期状態の導電を維持しています。

図2 提案手法の初期と伸縮時の様子([1]のFigure2より引用)

また本論文ではこの糸を編み込んでその特性を調べています。見た目にはほとんどわからない形で導電パスが構築できていることや編み物の硬さにほとんど影響を与えていないことを、S-Sカーブの測定などで示しています。

図2 3D螺旋導電ファイバーを編み込んだ様子([1]のFigure 4. より引用)

素材自体が非常に汎用的なもので耐久性もあるためとても有効なアプローチになりそうですね。

参考文献

[1]Yang, Z., Zhai, Z., Song, Z., Wu, Y., Liang, J., Shan, Y., … Jiang, H. (2020). Conductive and Elastic 3D Helical Fibers for Use in Washable and Wearable Electronics. Advanced Materials, 1907495, 1907495. https://doi.org/10.1002/adma.201907495

PigeonBot | 本物の羽を用いたバイオハイブリッドな翼を有するロボット

スタンフォード大学の研究チームが、鳥の骨格と骨の運動学を調査し、制御原理をロボットで再現するために、本物の羽を持つバイオハイブリッドモーフィングウイングを用いたロボット:PigeonBotを開発し、基礎となる設計原理を調査、その研究成果をScience Roboticsに寄稿しています。

エンジニアは鳥と同じくらい巧みに飛行を制御できるモーフィング翼を備えた飛行機械の開発に努めてきました。
鳥は、翼の平面形状パラメーターを同時にモーフィングするため、ロボットで具現化するのが特に難しいことが証明されており、これまで開発されてきたソリューションは、古典的な航空宇宙パラダイムに主に集中していました。

そこで、鳥がどのように翼のモーフィングを達成するかを理解するために、一般的なハト、コロンバリビアの翼の屈曲と伸展の運動学を測定し、骨格と羽の運動学は、20のプライマリと20のセカンダリの羽が、手首と指の動きによって制御されるほぼ線形の伝達関数を介して調整されることを示していた事を把握したそうです。

同時に、本物の羽を持つモーフィングウィングを開発した結果、4つのサーボ作動式手首および指関節を介して、弾性的に接続された40枚の羽の位置を制御する42の自由度を実現することができたそうです。
飛行試験では、空気力学的負荷が加えられた状態で、柔らかい羽毛のある翼が迅速かつ堅牢に変形することを実証したそうです。翼のモーフィングを可能にするだけでなく、ロボットの相互作用をより安全にし、翼を落下に対してより堅牢にし、修復可能にします。飛行試験で、手首と指の非対称の動きの両方がターン操作を開始できることがわかりました。指を使って飛行中に操縦することができる、と主張しています。

[1] : Chang, E., Matloff, L. Y., Stowers, A. K., & Lentink, D. (2020). Soft biohybrid morphing wings with feathers underactuated by wrist and finger motion. Science Robotics5(38).

URL : https://robotics.sciencemag.org/content/5/38/eaay1246

電熱変換ファイバーを編み込んだ伸縮性のファブリック発電装置

体温など熱から電気エネルギーを取り出す手法はウェアラブルやIoTといった領域で注目されています。今回紹介する技術は、伸縮可能なファブリックタイプの熱発電手法です。

Donghua UniversityらのチームによってNature Communicationsに掲載された本研究は特殊な機能を持った領域を作り、それを編み方によって構造化することで実現しています。

提案手法は図1のようにカーボンナノチューブのファイバーにPEDOT/PSSとoleamineで部分的にP型とN型の部分を作っています。ファイバーはアクリルのファイバーでコーティングしています。

図1 電熱変換ファイバーの製造プロセス図 ([1]のFig1より引用)

このファイバーはP,Nの領域を計算した価値で付与し織り込むことで図1fのように決まった周期構造を作ることができます。この構造を作ることで熱によって励起されたキャリアを外部に電気エネルギーとして取り出しています。

論文中では様々な編み方とそれぞれの発電と特性を調べています。今回は編み方を工夫した結果、44Kの温度差で70mW/m2の発電量と80%の伸縮性を確保したサンプルを形成できたそうです。

論文中では過去に提案された手法との比較なども掲載されており、本手法の特性の高さ、安定性、そして伸縮性などの優位性が語られています。

参考URL

https://www.nature.com/search?q=stretchable&order=date_desc

参考文献

[1] Sun, T., Zhou, B., Zheng, Q., Wang, L., Jiang, W., & Snyder, G. J. (n.d.). from woven thermoelectric fi bers. Nature Communications, (2020). https://doi.org/10.1038/s41467-020-14399-6

汗をかくように自身の温度を調整するソフトロボット

汗をかくように温度に応じて自身の温度を調整する機能を備えた3Dプリンタで作られるソフトロボットがScience Roboticsに掲載されました。

Robert F. Shepherd氏らが率いるコーネル大のチームはこれまでにも3Dプリント可能な自己修復機能を備えたソフトロボットなど、素材とデジタルファブリケーション を生かしたユニークな研究を行ってきました。

今回提案されたロボットはアクリルアミドによる柔らかなボディ部位と温度に対して表面の孔サイズが変化する部位から構成されています。

温度に対して変化する部位は酸化鉄のナノ粒子と温度応答性のポリマーとして知られるNIPAAm(Nイソプロピルアクリルアミド)が用いられています。

NIPAAmは20度程度では浸水的に振る舞いますが、温度が上昇していくと分子鎖の運動が大きくなり、LCST(下限臨界温度)を超えると脱水和を起こし収縮した状態が安定になることが知られています。

本研究では、彼らはPoreの有無やソフトロボットを動作させる流体の温度などを変化させながらそのボディの変化とソフトロボットのパフォーマンスを評価しています。

図1 提案したソフトロボットの外観と駆動の様子([1]のFig.3より引用)

その結果、提案手法は重量当たりの冷却の効率が高いことを過去の研究例と比較して示しています。

今回は複数のマテリアルの組み合わせを用いていますが、論文中ではトレー自体を交換しているようで実装できる形状自体はまだ多少の制約は存在しているようです。

コーネル大のグループのように素材を分子レベルからチューニングでき、それをFabricationやロボティクスの文脈で評価できるグループは今後もユニークな成果を出していきそうですね。

参考URL

原文(Open Access) :https://robotics.sciencemag.org/content/5/38/eaaz3918

参考文献

[1] Mishra, A., Wallin, T. J., Pan, W., Xu, P., Wang, K., Giannelis, E. P., … Shepherd, R. F. (2019). Autonomic Perspiration in 3D Printed Hydrogel Actuators. Science Advances, accepted(January), 1–10.

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