深呼吸の習慣を養うための香りのツールキット:AromaCue

Figure 1. AromaCueコンセプトの概要図 [1]

慶応大学の研究チームが、深呼吸の習慣を養うための香りのキットAromaCueの初期デザインを2020年度のTEI会議で紹介しています。
AromaCueは、香りのコンディショニングを使ってストレスの多い状況に対処するための、香りをベースにしたツールキットで、構成は、複数の刺激を用いた呼吸訓練装置と、着用可能な香りを出す装置だそうです。
香りを嗅ぐことで感情的な記憶を呼び起こすことができるため、初期設計では、様々な香りの特性を利用したそうです。

1週間のユーザー調査の結果、DASS-21のスコアが大幅に改善されたことを確認したそうです。また、最終研究発表会での香りの使用により、参加者からはポジティブなフィードバックが得られました。AromaCueツールキットは、ユーザーがストレスに対処するためのツールとして活用できると考えていると主張しています。今後のデザインでは、触覚シミュレーションと視覚的支援を比較し、ユーザー体験の違いを明確にしていくと締めくくられています。

[1] : Lin, Z., Kunze, K., Ueki, A., & Inakage, M. (2020, February). AromaCue-A Scent Toolkit To Cope with Stress using the 4-7-8 Breathing Method. In Proceedings of the Fourteenth International Conference on Tangible, Embedded, and Embodied Interaction (pp. 265-272).

URL : https://dl.acm.org/doi/abs/10.1145/3374920.3374940

感情をARで表現して他人とコミュニケーションする神経応答システム:Neo-Numena

CHI 2020: Neo-Noumena: Augmenting Emotion Communication [1]

モナーシュ大学の研究チームが、脳とコンピューターのインターフェースと人工知能を使用して、2つのヘッドマウントディスプレイを介して複合現実の中で他の人に感情的な状態を動的に表現するコミュニケーション神経応答システムである「Neo-Noumena」を開発し、2020年度のCHI会議に寄稿しています。

本研究では、システムを自由に使用して、5組の参加者にNeo-Numenaを3日間テストし、其の結果、感情的能力の測定は、感情を対人的に調整する参加者の能力の統計的に有意な増加を示しました。さらに、参加者のインタビューでは、時空間実現、客観的表現、および超自然的伝達に関するテーマが明らかになったとしています。

感情の主観的な経験は、コミュニケーションが難しいことで有名です。テクノロジーは対人コミュニケーションのための神経応答システムの設計を通じて、この概念に挑戦できると信じているとしており、対人関係で感情を伝える能力が従来の経験を超えて拡張される未来も近いかもしれません。
本研究内容というよりもコンセプト面では非常に興味深い研究だと思います。

[1] : Semertzidis, N., Scary, M., Andres, J., Dwivedi, B., Kulwe, Y. C., Zambetta, F., & Mueller, F. F. (2020, April). Neo-Noumena: Augmenting Emotion Communication. In Proceedings of the 2020 CHI Conference on Human Factors in Computing Systems (pp. 1-13).

URL : https://dl.acm.org/doi/abs/10.1145/3313831.3376599

肌を優しく撫でる感覚を再現できる形状記憶合金を用いた新しいウェアラブルデバイス

Touch me Gently: Recreating the Perception of Touch using a Shape-Memory Alloy Matrix [1]

ニュージーランドのオークランド工科大学のAR Human Labの研究チームが、肌に剪断力を加えることにより、自然なタッチ感覚の再現できるウェアラブルデバイスを開発し、その研究成果を2020年度のCHI会議にて報告しています。

軽量で伸縮性のある3cm程度の石膏をマトリックス上で皮膚に配置し、個々に形状記憶合金(SMA)ワイヤーの線を埋め込んで、剪断力を生成したそうです。デザインは、さまざまなサイズ、間隔、および前腕のプラスターのアタッチメントの知覚可能性を調査する一連の研究によって開発されたそうです。このデバイスによって、たとえば手首をつかんだり、腕を撫でたりするような感覚を可能にするとしています。

ユーザー評価では、再現されたタッチ感覚を実際のタッチとかなり似ていると評価されたそうで、視覚的な表現がなくても、ユーザーは全体を94.75%の精度で正しく区別できた結果を得られています。

前腕で再現されたタッチセンセーションを体験することでARとVRがどのように強化されるかを示す2つの使用例を示しています。

[1] : Muthukumarana, S., Elvitigala, D. S., Forero Cortes, J. P., Matthies, D. J., & Nanayakkara, S. (2020, April). Touch me Gently: Recreating the Perception of Touch using a Shape-Memory Alloy Matrix. In Proceedings of the 2020 CHI Conference on Human Factors in Computing Systems (pp. 1-12).

URL : https://dl.acm.org/doi/abs/10.1145/3313831.3376491

CvxNet : 学習可能な固体オブジェクトの分解ネットワークアーキテクチャ

CvxNet: Learnable Convex Decomposition [1]

Google Researchの研究チームが、凸状の低次元ファミリーを表すネットワークアーキテクチャを紹介し、成果を2020年度のCVPR会議に寄稿しています。この手法では、自動エンコードプロセスによって自動的に派生するそうです。
本論では、自動凸分解、画像から3Dへの再構成、部品ベースの形状検索など、このアーキテクチャのアプリケーションを調査し、その結果を載せています。動画を見ると直感的には理解しやすいものになっています。

背景として、固体状のオブジェクトは、凸状のポリトープ(つまり、凸状)のコレクションに分解できます。少数の凸を使用する場合、このような分解はジオメトリを区分した近似と考えることができます。この分解はコンピュータグラフィックスの基本であり、リアルタイムの物理シミュレーションなど、ジオメトリを近似する最も一般的な方法です。
凸状オブジェクトには、同時に明示的および暗黙的な表現であるという特性もあり、凸包の頂点を計算することによって導出されたメッシュとして明示的に解釈したり、半空間制約またはサポート関数のコレクションとして暗黙的に解釈したりできます。それらの暗黙の表現は、表現する必要のあるジオメトリのトポロジから離れて抽象化するため、ニューラルネットワークのトレーニングに特に適しています。

今回提案した手法は、グラフィックス/物理パイプラインで直接使用できるとし、論文中では、他のベンチマークされた手法との比較を行っています。

[1] : Deng, B., Genova, K., Yazdani, S., Bouaziz, S., Hinton, G., & Tagliasacchi, A. (2020). Cvxnet: Learnable convex decomposition. In Proceedings of the IEEE/CVF Conference on Computer Vision and Pattern Recognition (pp. 31-44).

URL : http://openaccess.thecvf.com/content_CVPR_2020/papers/Deng_CvxNet_Learnable_Convex_Decomposition_CVPR_2020_paper.pdf

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