3D印刷可能な導電性ポリマー複合材料の開発と物性評価

Figure 1. マルチマテリアル3Dプリント技術を用いた導電性エラストマー [1]

人工皮膚や触覚センサーなどの柔らかく伸縮性のあるセンサーは、素材のコンプライアンスが低いため、多くの柔らかなロボットアプリケーションにとって魅力的です。導電性ポリマーは多くのソフトセンサーに必要なコンポーネントです。

カーネギーメロン大学らの研究チームが、3D印刷可能な導電性ポリマー複合材料を用いて、複合材料の3D印刷を行い、その物質における電気機械的特性を示し、成果をRoboSoftに寄稿しています。

犬の骨の形をしたサンプルは、デジタルライトプロセッシング(DLP)ベースの3Dプリンターを使用しているそうです。この技術で3D印刷可能な樹脂は、モノマー、架橋剤、導電性ナノフィラー、および光開始剤で構成されています。特性評価は、最初に、2つの異なる架橋剤の影響を異なる組成で調査し、次に、導電性ナノフィラーの濃度の影響を調査しています。以前の研究を参考にして架橋剤を選択し、導電性ナノフィラーとしてカーボンナノチューブ(CNT)を利用し、サンプルは3D印刷を行なった後、電気機械テストセットアップを使用して特性評価されています。

論文中で紹介しているアプリケーション事例として、3D印刷されたソフトロボットの有用性を示すために、導電性樹脂と非導電性樹脂の両方で構成される静電容量ベースのジョイスティックセンサーが3D印刷されています。

[1] : Kim, S., Kim, S., Majditehran, H., Patel, D. K., Majidi, C., & Bergbreiter, S. (2020, May). Electromechanical Characterization of 3D Printable Conductive Elastomer for Soft Robotics. In 2020 3rd IEEE International Conference on Soft Robotics (RoboSoft) (pp. 318-324). IEEE.

URL : https://ieeexplore.ieee.org/abstract/document/9116027

自己発電機能を備えたインタラクティブなE-Skin

selfpowered e-skin

ユーザーの入力に対して視覚的な効果を与えるインタラクティブな電気皮膚(E-Skin)は様々な視覚的なフィードバックや入力のための行動を促すといった役割を果たすことができます。しかし、これらを実現するには複数のデバイスの組み合わせや消費電力などが課題となっています。

今回提案されたSelf-powered user-interactive electronic skin(SUE-skin)の技術はtriboelectric-optical modelという原理を利用することで、加えられた応力から発電、発光することができます。

このシステムは外部電源を用いずに20kPa程度の低いトリガー圧で瞬時に可視光を発生させることが可能です。

図1. SUE-Skinの発光原理([1]のFig.2 Aより引用)

SUE-Skinの構造は一般的なTENGデバイスのように電極とカプトンの積層構造部位とその上に発光層をもうけた構造をしています。発光層はZnSとバインダーから構成されています。基材を選択することで硬いものから、皮膚より柔らかい剛性に調整することができるようです。

また本論文ではSUE-Skinに発生した電位を部位毎に読み取ることでそこに加えられた動作を電気的な信号で読み取り、メディアコントローラとして活用するデモンストレーションも提案されています。通常のデバイスと異なり、この技術の場合はユーザーに対する視覚的なフィードバックに関してはシステムでプログラムしなくても行われるという特徴を有しています。

図2. SUE-Skinを用いたメディアコントロールの様子
([1]のFig.4より引用)

このようにインタフェース側の機能の一部を材料やデバイス単位で実現することで機能設計の一部をシステム側で担わなくてもすむようになるかもしれません。

参考文献

[1] Zhao, X., Zhang, Z., Liao, Q., Xun, X., Gao, F., Xu, L., … & Zhang, Y. (2020). Self-powered user-interactive electronic skin for programmable touch operation platform. Science Advances6(28), eaba4294.

参考URL:

https://advances.sciencemag.org/content/6/28/eaba4294

ビジョンベースを用いたデータ駆動型のマルチカメラ触覚センサーの開発

Towards vision-based robotic skins: a data-driven, multi-camera tactile sensor [1]

ETHチューリッヒ校らの研究チームが、柔らかい表面に適用される接触力の分布に関する情報を提供するマルチカメラ光触覚センサーの設計開発を行い、その研究成果をRoboSoftに寄稿しています。

接触力分布は、表面に広がる球形の粒子の動きで検出することが可能であり、力を受けると変形します。 小さな埋め込みカメラは、さまざまな粒子パターンの画像をキャプチャし、畳み込みニューラルネットワークを用いた機械学習アーキテクチャを通じて3次元の接触力分布にマッピングされます。

この論文で提案している設計は、ミラーなどの追加の反射コンポーネントを使用せずに、既存のほとんどのカメラベースの触覚センサーよりも大きな接触面と薄い構造を示しています。 ロボットスキンなどのより大きな表面へのスケーラビリティを容易にする学習アーキテクチャのモジュール式実装について論文で紹介しています。

[1] : Trueeb, C., Sferrazza, C., & D’Andrea, R. (2020, May). Towards vision-based robotic skins: a data-driven, multi-camera tactile sensor. In 2020 3rd IEEE International Conference on Soft Robotics (RoboSoft) (pp. 333-338). IEEE.

URL : https://arxiv.org/abs/1910.14526

亜鉛ベースの透明マルチカラーディスプレイ

Figure 1. 2つの異なるタイプのエレクトロクロミックデバイスの概略図 [1]
(論文[1]のFigure 1より引用)

エレクトロクロミックディスプレイは、有望なカラーディスプレイテクノロジーとして広い研究の対象となっています。現在の最先端の無機マルチカラーエレクトロクロミックディスプレイは、透明性を犠牲にするナノキャビティ構造を利用しているため、多様なアプリケーションを制限しています。

カナダのアルバータ大らの研究チームは、亜鉛ベースのエレクトロクロミックデバイスに基づく、透明な無機マルチカラーディスプレイを開発し、その成果をNature Light Science & Applicationに寄稿しています。

上部と下部のエレクトロクロミック電極の独立した動作を可能にするため、同じまたは異なる色の状態でデュアルエレクトロクロミック層を利用することにより、デバイスの構成に柔軟性を追加できるそうです。亜鉛–ナトリウムバナジウムオキサイド(Zn–SVO)エレクトロクロミックディスプレイは、2つのSVO電極の間にZnを挟むことによって構成され、高い光透過性を維持しながら、複数の色(オレンジ、アンバー、黄色、茶色、チャートリューズ、グリーン)を可逆的に切り替えることができたとしています。

また、Zn–SVOエレクトロクロミックディスプレイは、1.56 Vの開回路電位(OCP)を備えており、自己着色動作と魅力的なエネルギー回収機能を実現するとしています。この研究は、無機マルチカラーディスプレイの高透明性と高エネルギー効率を統合する新しいコンセプトを提示するとしています。

[1] : Zhang, W., Li, H., Yu, W.W. et al. Transparent inorganic multicolour displays enabled by zinc-based electrochromic devices. Light Sci Appl 9, 121 (2020).

URL : https://phys.org/news/2020-07-transparent-inorganic-multicolour-enabled-zinc-based.html

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