「ラディカル・アトムズ(Radical Atoms)」とは、2009年のCHIでMIT Media Labの石井裕教授が率いるTangible Media Group(タンジブル・メディアグループ)によって発表された、マテリアルとのインタラクションに関する新しいビジョンです。(動画は2016年のARS Electronicaでの動画)
このラディカル・アトムズという概念を理解するには、少しTangible Media Groupの歴史を知る必要がある。彼らは以前からTangible Bitsという概念を提唱しています。
レポート中では、Tangible Bitsとはデジタルの世界観が人間の物理的な表現行為と接触する部分があり、人間と直接対話できるという表現をしています。解釈を広げると、人間の物理的な接触および表現行為が、そのままデジタルの操作、表現行為に繋がる概念とも言い換えられる、と主張しています。
これに対して、Radical Atomsは、Bitを超えたAtom、つまりビット情報ではなく、すべての原子をコンピュテーショナルにダイナミックに変形可能な世界観と提唱しています。この概念をもう少し日常生活に当てはめると、コンピュテーショナルな部分をできるだけ隠すことで、実際の物質自体がインターフェースになる世界観です。
彼らがBeyond Tangible bitsという表現をしているのは、こういったデジタル情報ですら、動的に動かせる物質がコンピュテーショナルに演算可能で、かつインターフェースになる未来像を提唱している、と解釈できます。
非常に理解しづらい概念ではあるが、彼らの研究内容を時系列で見ていくと、その提唱する背景が理解できるかもしれません。参考になる動画も下記に貼っておきましたので、興味のある方はぜひ。
[1] Ishii, H., Lakatos, D., Bonanni, L., & Labrune, J. B. (2012). Radical atoms: beyond tangible bits, toward transformable materials. interactions, 19(1), 38-51.URL : https://dl.acm.org/citation.cfm?id=2065337 [2] Radical Atoms Exhibition at Ars Electronica : https://tangible.media.mit.edu/project/radical-atoms-exhibition-at-ars-electronica/ [3] Hiroshi Ishii : Vision Driven: Beyond Tangible Bits, Towards Radical Atoms (June 2014) : https://www.youtube.com/watch?v=MNQe47xZEoE