3D印刷可能で、高温条件でのUV(紫外光)の照射によりポリマーネットワークを再構成することで形状を記憶できる液晶エラストマー材料とそのファブリケーション 技術がAdvanced Materialsに掲載されています。
液晶エラストマー(LCE)はソフトロボットや光応答性のアクチュエータ材料などとして応用が期待されている材料です。液晶はnematicとisotropicという2つの相状態を転移温度によって遷移します。この状態は一般的には機械的による延伸と架橋によってもたらされています。(※)
(※磁場などによってもたらされているケースもあるようです。)
また1mm以上の厚みをもつバルクのLCEフィルムではhigh operating temperature direct ink writing(HOT-DIW)と呼ばれる3Dプリンタで射出しながら描画する手法によって同様の効果が得られることが知られています。
今回Harvard Universityらのチームによって提案された手法では、3D Printによって射出されたLCE材料の構造体を相転移温度以上でUVを照射し、その後室温で再度架橋させることでHOT-DIWによってもたらされていたnematicの構造を再構成しています(図1)。
このようにすることでLCEは特定の形状を記憶することができます。下の図2は、相転移温度以上でコーン状に変形する印刷物をUVを与えることでその構造を記録(その状態で架橋構造を形成)しています。
下の動画は本論文のSupportingに掲載されているものです。右側は相転移温度以上で安定したコーン状態で記録しているので、お湯につけていることで二つの形成物が同様の形状となります。
本手法では架橋構造を再構成することで温度に対してより安定かさせるだけでなく、際架橋する場所などをマスクなどによってコントロールすることもできるので、特定の箇所にのみ変形を起こさせるといった設計も可能となります。
素材とDigital Fabricationを組み合わせることでSelf-Foldingなどの設計の幅がますます広がりそうですね。
参考文献
[1] Davidson, E. C., Kotikian, A., Li, S., Aizenberg, J., & Lewis, J. A. (2020). 3D Printable and Reconfigurable Liquid Crystal Elastomers with Light‐Induced Shape Memory via Dynamic Bond Exchange. Advanced Materials, 32(1), 1905682.