スイス連邦工科大学チューリッヒ校(ETH Zurich)の研究チームが、モノ自体に情報およびデータを埋め込む技術を開発し、その研究成果をNature Biotechnologyが発表しました。
本技術は、DNA分子がデータを記録し、これらの分子はナノメートルシリカビーズにカプセル化され、あらゆる形状のオブジェクトを印刷またはキャストするために使用されるさまざまな材料に融合されるそうです。
論文中に記載がありますが、カプセル化するのは、単純にDNAを機能性材料を混ぜると、加水分解により急速にDNAが劣化するためだそうです。
この技術を使用すれば、3Dプリントした物体に設計情報など様々なデータを失われることなく記録できるため、IoT(Internet of Things)になぞらえた、DoT(DNA of Things)という概念を提唱しているようです。
論文では、最初に、DoTを使用して、その合成用の45kBデジタルDNA設計図を含むテストモデルであるスタンフォードバニーを3D印刷しています。(図1はワークフロー図)
追加のDNA合成や情報の劣化なしに、それぞれ前世代に作成したデータを用いて、5世代のバニーを合成したそうです。
また、DoTの拡張性をテストするために、アクリル樹脂のメガネレンズのDNAに1.4MBのビデオを保存し、アクリル樹脂の小さな断片を切り取り、DNAデータを取得したそうです。
DoTは、医療用インプラントに電子医療記録を保存し、日常のオブジェクトにデータを隠し、独自の設計図を含むオブジェクトを製造するために適用できる、と主張しています。
DoT、DNA of thingsという概念は、非常に面白いフレームワークだといえます。物自体の世代間の情報トレースなどができてくるようになると、真贋判定などにも使用可能なケースが増えそうです。
URL : https://www.nature.com/articles/s41587-019-0356-z